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ティェンタオの自由訳漢詩 1928

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 盛唐22ー崔?
     黄鶴楼               黄鶴楼

  昔人已乗黄鶴去   昔人(せきじん)  已(すで)に黄鶴(こうかく)に乗って去り
  此地空余黄鶴楼   此(こ)の地(ち)   空(むな)しく余(あま)す  黄鶴楼
  黄鶴一去不復返   黄鶴(こうかく)   一たび去って  復(ま)た返らず
  白雲千載空悠悠   白雲(はくうん)   千載(せんざい)  空しく悠悠(ゆうゆう)
  晴川歴歴漢陽樹   晴川(せいせん)  歴歴(れきれき)たり  漢陽(かんよう)の樹(き)
  芳草萋萋鸚鵡洲   芳草(ほうそう)  萋萋(せいせい)たり  鸚鵡(おうむ)の洲(しゅう)
  日暮郷関何処是   日暮(にちぼ)   郷関(きょうかん)  何(いず)れの処か是(これ)なる
  煙波江上使人愁   煙波(えんぱ)   江上(こうじょう)   人をして愁え使(し)む

  ⊂訳⊃
          昔の人は  すでに黄鶴に乗って去り
          跡地には  黄鶴楼だけが空しく残る
          黄鶴は去って  二度ともどらず
          白雲だけが   千年変わらずに浮かんでいる
          川の向こうに  漢陽の樹々がくっきりと見え
          鸚鵡の洲には  かぐわしい草が生い茂る
          暮れ方に  長安はどの方角かと見まわせば
          長江の岸  立ち込める靄が私を悲しませる


 ⊂ものがたり⊃ 「黄鶴楼」の詩は李白が激賞したことで有名です。黄鶴楼は鄂州城(湖北省武漢市武昌区)の西南隅、長江を見おろす黄鶴磯の上に立っていました。昔ある人が黄鶴楼の壁に描いてあった黄鶴に乗って飛び去り、仙人になった話などいろいろな伝説があります。
 詩は前後四句ずつに分かれ、前半は黄鶴楼伝説から説き起こして、人生の無常に及びます。後半は一転して眼前の景を詠い、長安を思う心で結びます。「晴川」は晴れた日の長江で、対岸に漢陽の街が見えます。「鸚鵡洲」は長江の中洲で、眼下に見えました。
 「芳草」は香りのよい草ですが、楚辞以来、君子に喩えられます。人材がいても用いられないのを嘆く意味があり、それが結びの「日暮 郷関 何れの処か是なる」に結びつきます。「郷関」は故郷であると同時にしばしば都長安を意味しました。
 崔?は観察御史などをへて天宝年間に司勲員外郎、太僕寺(牧馬と車輿を司る実務官庁)の丞を歴任し、安禄山の乱が勃発する前年の天宝十三載(754)に亡くなりました。享年はおよそ五十一歳です。
  

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