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ティェンタオの自由訳漢詩 1925

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 盛唐19ー王湾
   次北固山下           北固山下に次る

  客路青山外     客路(かくろ)    青山(せいざん)の外(そと)
  行舟緑水前     行舟(こうしゅう)  緑水(りょくすい)の前
  潮平両岸闊     潮(うしお)は平らかにして両岸闊(ひろ)く
  風正一帆懸     風は正しうして一帆(いっぱん)懸(かか)かる
  海日生残夜     海日(かいじつ)  残夜(ざんや)に生じ
  江春入旧年     江春(こうしゅん)  旧年に入る
  郷書何処達     郷書(きょうしょ)  何(いず)れの処(ところ)にか達せん
  帰雁洛陽辺     帰雁(きがん)    洛陽の辺(ほとり)

  ⊂訳⊃
          旅の航路は  島を巡ってつづき
          緑の水上を  舟は滑らかに進む
          広がる岸辺  満々と潮は満ち
          風を受けて  帆は舟上にふくらむ
          夜が明けない内に  海上に朝日が昇り
          年が明けない内に  江上に春が来る
          故郷からの便りは  どこまで来ているだろうか
          北に帰る雁たちは  洛陽の辺りに着いただろうか


 ⊂ものがたり⊃ 王湾(692ー750?)は東都洛陽の人。玄宗の先光二年(713)に進士に及第、江南を遊歴して文名を挙げます。地方官を務めたあと校書郎になり、宮中の図書の校訂に従事しました。天宝九載(750)ころに亡くなり、享年は五十九歳くらいです。
 詩題の「北固山」(ほくこさん)は潤州(江蘇省鎮江市)の北をながれる長江中の島です。当時は島を山と呼ぶならわしでした。詩は四句ずつ前後に分かれ、前半は舟航の描写です。「青山」は北固山のこと。当時の長江は潤州のすぐ東に河口がありましたので、満潮のときは川幅が大きく拡がったといいます。
 後半は北固山の下で「次」(やど)ったときの感懐です。張説は「海日 残夜に生じ 江春 旧年に入る」の対句を高く評価し、みずから墨書して政事堂に掲げ、能文の士の手本にしたといいます。結びの「帰雁」は漢代の蘇武の故事を踏まえており、故郷へ出した書信という意味を含んでいます。

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