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ティェンタオの自由訳漢詩 1916

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 盛唐10ー張説
   幽州夜飲            幽州の夜飲

  涼風吹夜雨     涼風(りょうふう)  夜雨(やう)を吹き
  蕭瑟動寒林     蕭瑟(しょうしつ)として寒林(かんりん)を動かす
  正有高堂宴     正(まさ)に高堂の宴(えん)有りて
  能忘遅暮心     能(よ)く遅暮(ちぼ)の心を忘る
  軍中宜剣舞     軍中(ぐんちゅう)  宜(よろ)しく剣舞すべし
  塞上重笳音     塞上(さいじょう)  笳音(かおん)を重んず
  不作辺城将     辺城(へんじょう)の将と作(な)らずんば
  誰知恩遇深     誰か恩遇(おんぐう)の深きを知らん

  ⊂訳⊃
          涼しい風が  夜の雨を吹き散らし
          冬の林が   寂しげに揺れている
          いまここに  高堂の宴がひらかれ
          老いる事の  悲しみを忘れさせる
          陣中だから  剣の舞がふさわしく
          辺塞だから  葦笛の演奏が好まれる
          辺境の城に 将軍となって初めて
          皇帝陛下の 手厚い御恩がわかるのだ


 ⊂ものがたり⊃ 開元四年(716)に姚崇(ようすう)が失脚して張説は岳州から都に呼びもどされます。新たに任命されたのは幽州都督でした。「幽州」(北京の南付近)は北辺の地で、中央で活躍したかった張説は不満でした。しかし、赴任せざるを得ません。
 詩は中四句を前後の二句で囲む形式で、はじめの二句は導入部。雨後の夜の寂しげなようすが描かれます。中四句では宴の楽しさが老いの悲しみを忘れさせると感謝の言葉を述べ、余興の剣舞や葦笛の演奏を褒めます。「高堂」は立派な広間という意味で、新都督の歓迎の宴が開かれたのでしょう。
 そして結びでは、辺地に赴任してはじめて陛下の御恩の有り難さがわかると、不満の心を隠すのです。詩は宴会で披露されたもので、一座の者は張説が不満を抱いて赴任して来たのではないかと思っています。それをうまく否定し、詩が朝廷に伝わることを計算に入れています。 

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