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ティェンタオの自由訳漢詩 1914

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 盛唐8ー張説
   還至端州駅前       還りて端州駅に至る 前に
   与高六別処         高六と別れし処なり

  旧館分江口     旧館(きゅうかん)  分江(ぶんこう)の口(ほとり)
  凄然望落暉     凄然(せいぜん)として落暉(らくき)を望む
  相逢伝旅食     相逢(あいあ)うて旅食(りょしょく)を伝え
  臨別換征衣     別れに臨んでは征衣(せいい)を換(か)えたり
  昔記山川是     昔は記す  山川(さんせん)の是(ぜ)なるを
  今傷人代非     今は傷む  人代(じんだい)の非(ひ)なるを
  往来皆此路     往来  皆  此の路(みち)なるに
  生死不同帰     生死  帰るを同(とも)にせず

  ⊂訳⊃
          駅舎は今も   川筋の分かれる岸にあり
          悲しい思いで  沈む夕日を眺める
          旅で出会って  食事を分け合い
          別れに際して  旅の衣を交換した
          むかし見た   山も川も変わらぬが
          人の世の    移り変わりに心は痛む
          行きも帰りも  同じ路を通るのに
          生死は変じて  帰りを共にできないとは


 ⊂ものがたり⊃ 詩題の「端州」(広東省高要県)は広州の西にある宿駅です。武后の長安三年(703)、宰相の魏元忠(ぎげんちゅう)と高戩(こうせん)が張易之兄弟に誣告されました。そのとき張説は二人を弁護したため、欽州(江西壮族自治区欽県)に流されます。
 詩題の「高六」は高戩のことで、高戩の配所は不明ですが、二人は流謫の旅の途中で出会い、端州まで旅を共にしたのでしょう。端州駅で別れ、張説は西へ高戩は南の配所に向かいました。
 神龍元年(705)の政変で張兄弟が誅されると、張説は赦されて都にもどることになりますが、高戩はすでに配所で亡くなっていました。詩は帰途、端州駅まで来たとき、高戩(高六)を偲んで作ったものです。端州は西江のほとりにあり、「分江口」は川筋の分かれるところを意味します。「征衣を換えたり」はお互いの無事を祈って旅の衣を交換するのです。

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