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ティェンタオの自由訳漢詩 1913

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 盛唐7ー張説
   春雨早雷           春雨 早雷

  東北春風至     東北より春風(しゅんぷう)至り
  飄飄帯雨来     飄飄(ひょうひょう)  雨を帯びて来たる
  払黄先変柳     黄(こう)を払って先ず柳を変ぜしめ
  点素早驚梅     素(そ)を点じて早(つと)に梅を驚かす
  樹藹懸書閣     樹(き)は藹(あい)たり  書を懸(か)くるの閣(かく)
  煙含作賦台     煙(もや)は含む  賦(ふ)を作るの台
  河魚未上凍     河魚(かぎょ)   未(いま)だ凍(とう)に上(のぼ)らず
  江蟄已聞雷     江蟄(こうちつ)  已(すで)に雷(いかずち)を聞く
  美人宵夢著     美人(びじん)   宵夢(しょうむ)著(ちゃく)し
  金屏曙不開     金屏(きんぺい)  曙(あけぼの)に開かず
  無縁一啓歯     一(ひと)たび歯を啓(ひら)くに縁(よし)無く
  空酌万年杯     空しく酌(く)む   万年杯(まんねんはい)

  ⊂訳⊃
          東北の方から  春風が
          雨と一緒に   そよそよと吹く
          新芽を撫でて  柳の木を促し
          梅をつついて  白い花を咲かせる
          緑の木は    書庫のまわりに鬱蒼と茂り
          白い靄は    作賦台のあたりに立ち込める
          河の魚は    凍った流れをまだ遡らず
          雷の音で    川辺の虫や蛇が冬眠から覚める
          美女がひとり  昨夜の夢に捉われて
          朝になっても  金の屏風が開かない
          にっこり笑う  気分になれないまま
          ひとり空しく   飲んでいるのは万年杯


 ⊂ものがたり⊃ この詩も宴会のときの作であることが、最後の一句でわかります。
 詩は四句ずつ三段に分けて読むことができ、はじめの四句は春の到来を示すごく普通の出だしです。つぎの四句では目を転じ、「河魚」(「ふぐ」とも読めます)や「江蟄」(川辺の土中で冬籠りしている虫など)に及び、つぎに何が出て来るかと期待を持たせます。
 すると最後の四句で美女が出て来て、ひとり寝を悩む風情です。ひとり空しく杯を傾けているのは「万年杯」でした。万年杯というのは酢をついだ杯で、健康ドリンクです。ここで一座はどっと笑いこけるわけで、さんざん気を持たせておいて最後はドンデン返しで結ぶ機知の詩、遊びの詩です。       

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