南北朝43ー庾信
梅花 梅花
当年蝋月半 当年(とうねん) 蝋月(ろうげつ)半(なか)ばにして
已覚梅花闌 已(すで)に覚(おぼ)ゆ 梅花(ばいか)の闌(たけなわ)なるを
不信今春晩 信ぜず 今春(こんしゅん)の晩(おそ)きを
倶来雪裏看 倶(とも)に来たって 雪裏(せつり)を看(み)る
樹動懸冰落 樹(き)動いて懸冰(けんぴょう)落ち
枝高出手寒 枝(えだ)高くして手を出(い)だせば寒し
早知覓不見 早(つと)に 覓(たず)ぬるも見えずと知らば
真悔著衣単 真(まこと)に著衣(ちゃくい)の単(ひとえ)なるを悔(く)ゆ
⊂訳⊃
かつては 十二月も半ばになれば
梅の花は 盛りを過ぎたと思ったものだ
こんなにも 春が遅いと思わずに
友を誘って 雪の中の梅を見る
木が動けば つららが落ち
高い枝に 手を伸ばすと凍えそうだ
梅見には 早過ぎると知らなかったので
単衣の服で 出てきたのが悔やまれる
⊂ものがたり⊃ 「梅花」の詩では北国の春の遅いことを詠い、南朝で過ごした往時を懐かしみます。四句ずつ前後に分かれ、「当年」は昔のことです。つまり、江南では「蝋月半ば」(陰暦十二月半ば)には梅の花は盛りを過ぎたものだと回顧します。そして、北国では春がこんなに遅いとは思わなかったので、友人と雪の中を梅見にやって来た状況を設定します。
後半は雪中の梅見のみじめさを詠うもので、木が動けば花びらの代わりに氷柱(つらら)が落ち、昔やったように梅の枝に手を伸ばすと、手が凍えそうになると詠います。最後は薄着をして出て来たのが悔やまれると結んで、自分の運命を嘆くのです。
庾信は北周の建国後二十五年間も北朝に仕え、驃騎大将軍、開府同三司にいたります。しかし、ついに帰国できないまま長安で亡くなりました。享年六十九歳でした。
梅花 梅花
当年蝋月半 当年(とうねん) 蝋月(ろうげつ)半(なか)ばにして
已覚梅花闌 已(すで)に覚(おぼ)ゆ 梅花(ばいか)の闌(たけなわ)なるを
不信今春晩 信ぜず 今春(こんしゅん)の晩(おそ)きを
倶来雪裏看 倶(とも)に来たって 雪裏(せつり)を看(み)る
樹動懸冰落 樹(き)動いて懸冰(けんぴょう)落ち
枝高出手寒 枝(えだ)高くして手を出(い)だせば寒し
早知覓不見 早(つと)に 覓(たず)ぬるも見えずと知らば
真悔著衣単 真(まこと)に著衣(ちゃくい)の単(ひとえ)なるを悔(く)ゆ
⊂訳⊃
かつては 十二月も半ばになれば
梅の花は 盛りを過ぎたと思ったものだ
こんなにも 春が遅いと思わずに
友を誘って 雪の中の梅を見る
木が動けば つららが落ち
高い枝に 手を伸ばすと凍えそうだ
梅見には 早過ぎると知らなかったので
単衣の服で 出てきたのが悔やまれる
⊂ものがたり⊃ 「梅花」の詩では北国の春の遅いことを詠い、南朝で過ごした往時を懐かしみます。四句ずつ前後に分かれ、「当年」は昔のことです。つまり、江南では「蝋月半ば」(陰暦十二月半ば)には梅の花は盛りを過ぎたものだと回顧します。そして、北国では春がこんなに遅いとは思わなかったので、友人と雪の中を梅見にやって来た状況を設定します。
後半は雪中の梅見のみじめさを詠うもので、木が動けば花びらの代わりに氷柱(つらら)が落ち、昔やったように梅の枝に手を伸ばすと、手が凍えそうになると詠います。最後は薄着をして出て来たのが悔やまれると結んで、自分の運命を嘆くのです。
庾信は北周の建国後二十五年間も北朝に仕え、驃騎大将軍、開府同三司にいたります。しかし、ついに帰国できないまま長安で亡くなりました。享年六十九歳でした。