初唐45ー張若虚
春江花月夜 春江 花月の夜 (中?十二句)
白雲一片去悠悠 白雲(はくうん)一片(いっぺん) 去って悠悠(ゆうゆう)
青楓浦上不勝愁 青楓(せいふう)浦上(ほじょう) 愁いに勝(た)えず
誰家今夜扁舟子 誰が家ぞ 今夜 扁舟(へんしゅう)の子
何処相思明月楼 何(いず)れの処(ところ)か相思う 明月の楼
可憐楼上月徘徊 憐(あわ)れむ可(べ)し 楼上 月 徘徊(はいかい)し
応照離人粧鏡台 応(まさ)に照らすべし 離人(りじん)の粧鏡台(しょうきょうだい)
玉戸簾中巻不去 玉戸(ぎょくこ) 簾中(れんちゅう) 巻けども去らず
擣衣砧上払還来 擣衣(とうい) 砧上(ちんじょう) 払えども還(ま)た来たる
此時相望不相聞 此の時 相望んで相聞かず
願逐月華流照君 願わくは月華(げっか)を逐(お)うて 流れて君を照さん
鴻雁長飛光不度 鴻雁(こうがん) 長飛(ちょうひ)して 光 度(わた)らず
魚龍潜躍水成文 魚龍(ぎょりゅう) 潜躍(せんやく)して 水 文(あや)を成す
⊂訳⊃
白雲ひとつ 遥か彼方へ流れゆき
入江に楓樹 悲しみが満ちわたる
この宵に 小舟でゆくのは誰なのか
妻の住む 明月楼はどこにあるのか
哀れにも 楼上に月はたゆたい
ひとり妻の 化粧台を照らしている
戸口の簾は 月の光を遮ることができず
払っても また砧の上に降りそそぐ
お互いに 想い合っても言葉は交わせず
月の光と いっしょに流れて君を照らしたい
雁たちは 遠くへ飛んで光もとどかず
魚たちは 水に隠れて波紋を描くだけ
⊂ものがたり⊃ 中?十二句から後半になります。詩は一転して、故郷に残してきた妻を想う旅人の歌になります。旅人は作者本人でしょう。小さな舟に乗って移動しており、空の雲、岸辺の楓(ふう)にも淋しさを感じます。「明月楼」は恋人もしくは妻の住む家を雅していうもので、遠くの妻を思いやるのです。
つぎの四句では、月影のなかでひとり自分を待っている妻の姿を想像しながら、そこに照っている月の光に託して妻のもとへ帰りたい思いを描きます。
つぎの四句は前の四句を直叙で述べ、月の光といっしょになって「君」(妻)のもとへ行きたいと詠います。「鴻雁」も「魚龍」(魚類の総称)も便りを運んでくれる使者で、雁も魚も姿を隠して協力してくれないと嘆きます。
春江花月夜 春江 花月の夜 (中?十二句)
白雲一片去悠悠 白雲(はくうん)一片(いっぺん) 去って悠悠(ゆうゆう)
青楓浦上不勝愁 青楓(せいふう)浦上(ほじょう) 愁いに勝(た)えず
誰家今夜扁舟子 誰が家ぞ 今夜 扁舟(へんしゅう)の子
何処相思明月楼 何(いず)れの処(ところ)か相思う 明月の楼
可憐楼上月徘徊 憐(あわ)れむ可(べ)し 楼上 月 徘徊(はいかい)し
応照離人粧鏡台 応(まさ)に照らすべし 離人(りじん)の粧鏡台(しょうきょうだい)
玉戸簾中巻不去 玉戸(ぎょくこ) 簾中(れんちゅう) 巻けども去らず
擣衣砧上払還来 擣衣(とうい) 砧上(ちんじょう) 払えども還(ま)た来たる
此時相望不相聞 此の時 相望んで相聞かず
願逐月華流照君 願わくは月華(げっか)を逐(お)うて 流れて君を照さん
鴻雁長飛光不度 鴻雁(こうがん) 長飛(ちょうひ)して 光 度(わた)らず
魚龍潜躍水成文 魚龍(ぎょりゅう) 潜躍(せんやく)して 水 文(あや)を成す
⊂訳⊃
白雲ひとつ 遥か彼方へ流れゆき
入江に楓樹 悲しみが満ちわたる
この宵に 小舟でゆくのは誰なのか
妻の住む 明月楼はどこにあるのか
哀れにも 楼上に月はたゆたい
ひとり妻の 化粧台を照らしている
戸口の簾は 月の光を遮ることができず
払っても また砧の上に降りそそぐ
お互いに 想い合っても言葉は交わせず
月の光と いっしょに流れて君を照らしたい
雁たちは 遠くへ飛んで光もとどかず
魚たちは 水に隠れて波紋を描くだけ
⊂ものがたり⊃ 中?十二句から後半になります。詩は一転して、故郷に残してきた妻を想う旅人の歌になります。旅人は作者本人でしょう。小さな舟に乗って移動しており、空の雲、岸辺の楓(ふう)にも淋しさを感じます。「明月楼」は恋人もしくは妻の住む家を雅していうもので、遠くの妻を思いやるのです。
つぎの四句では、月影のなかでひとり自分を待っている妻の姿を想像しながら、そこに照っている月の光に託して妻のもとへ帰りたい思いを描きます。
つぎの四句は前の四句を直叙で述べ、月の光といっしょになって「君」(妻)のもとへ行きたいと詠います。「鴻雁」も「魚龍」(魚類の総称)も便りを運んでくれる使者で、雁も魚も姿を隠して協力してくれないと嘆きます。