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ティェンタオの自由訳漢詩 1903

 初唐43ー張若虚
   春江花月夜           春江 花月の夜        (前八句)

  春江潮水連海平   春江(しゅんこう)の潮水(ちょうすい)  海に連なって平らかなり
  海上明月共潮生   海上(かいじょう)の明月(めいげつ)  潮(うしお)と共に生ず
  灔灔随波千万里   灔灔(えんえん)  波に随う  千万里
  何処春江無月明   何(いず)れの処か  春江  月明(げつめい)無からん
  江流宛転遶芳甸   江流(こうりゅう)  宛転(えんてん)として芳甸(ほうでん)を遶(めぐ)り
  月照花林皆似霰   月は花林(かりん)を照らして  皆  霰(あられ)に似たり
  空裏流霜不覚飛   空裏(くうり)の流霜(りゅうそう)  飛ぶを覚(おぼ)えず
  汀上白沙看不見   汀上(ていじょう)の白沙(はくさ)  看(み)れども見えず

  ⊂訳⊃
          春の長江は  漫々と水を湛えて海につらなり
          明るい月が  満ちてくる潮と共に海上に昇る
          月の光は   波に砕けて万里の彼方へつづき
          春の長江は  月の明かりで満たされている
          ゆるやかに  川は流れて花咲く野原をめぐり
          樹々の花は  月に照らされて霰のようだ
          霜の気配も  月の明かりに紛れて見えず
          波打ち際の  砂の白さも見分けがつかない


 ⊂ものがたり⊃ 詩が七言律詩の形式的整斉というかたちで完成されていたころ、宮廷の外では劉希夷(りゅうきい)の「白頭を悲しむ翁に代る」(1月22日のブログ参照)に代表されるような歌行(かこう)の伝統はどうなったでしょうか。
 張若虚(ちょうじゃくきょ)は揚州(江蘇省揚州市)の人。生没年は不詳です。中宗の神龍年間(705ー707)に活躍したといいますが、宮廷詩人ではありません。開元年間に賀知章(がちしょう)と並んで「呉中の四傑」と称されますので、開元年間まで活躍した詩人でしょう。ただし、残された詩は二首。『唐詩選』に載るのは「春江 花月の夜」一首です。
 詩題は楽府題のひとつで、陳の後主が作った曲名と言われています。七言古詩三十六句の長篇で、四句ずつ九段に分けて読むことができます。前八句のはじめ四句は出だしで、「春江の潮水」と「海上の明月」を描いて場所と時間を設定します。
 つぎの四句は、月の照らす空間をさらに細かく描きます。「芳甸」は花の咲く野原、「花林」は花の咲く木立です。古代の中国では「霜」は空から降ってくると考えられていましたので、空中を流れる霜の気配もわからず、「汀上の白沙」も見分けがつかないと、月の明るさを幻想的に詠います。
 

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