Quantcast
Channel: 漢詩を楽しもう
Viewing all articles
Browse latest Browse all 554

ティェンタオの自由訳漢詩 1894

$
0
0
 初唐34ー杜審言
   旅寓安南           安南に旅寓す

  交趾殊風候     交趾(こうし)  風候(ふうこう)殊(こと)なり
  寒遅暖復催     寒(かん)遅くして  暖  復(また)た催(もよお)す
  仲冬山果熟     仲冬(ちゅうとう)  山果(さんか)熟し
  正月野花開     正月(しょうがつ)  野花(やか)開く
  積雨生昏霧     積雨(せきう)   昏霧(こんむ)を生じ
  軽霜下震雷     軽霜(けいそう)  震雷(しんらい)を下(くだ)す
  故郷踰万里     故郷(こきょう)  万里を踰(こ)え
  客思倍従来     客思(かくし)   従来に倍(ばい)す

  ⊂訳⊃
          安南の地は  気候風土が異なり
          寒さは遅く   暖かになるのは早い
          冬のさ中に  山の木の実が熟し
          正月には   野草の花が咲く
          長雨が    濃い霧をもたらし
          霜が降れば  雷が鳴る
          故郷は    万里の彼方
          春が来れば  旅の愁いはいや増すのだ


 ⊂ものがたり⊃ 詩題の「安南」(あんなん)はベトナム北部の地名で、「交趾」はその別名です。はじめの二句でベトナム北部の地は寒くなるのが遅く、暖かくなるのは早いと気候を概観します。中四句は華北との気候風土の違いを敷衍するもので、「仲冬」(冬十一月)に木の実が熟し、正月には野の花が咲いていると詠います。
 洛陽の住人杜審言にとって、北との気候の違いはとても印象的であったのでしょう。気候を紹介して、結びでは望郷の思いを述べますが、宮廷詩特有の煩瑣な表現はなくなり、個人的な詩に変化しています。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 554

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>