初唐34ー杜審言
旅寓安南 安南に旅寓す
交趾殊風候 交趾(こうし) 風候(ふうこう)殊(こと)なり
寒遅暖復催 寒(かん)遅くして 暖 復(また)た催(もよお)す
仲冬山果熟 仲冬(ちゅうとう) 山果(さんか)熟し
正月野花開 正月(しょうがつ) 野花(やか)開く
積雨生昏霧 積雨(せきう) 昏霧(こんむ)を生じ
軽霜下震雷 軽霜(けいそう) 震雷(しんらい)を下(くだ)す
故郷踰万里 故郷(こきょう) 万里を踰(こ)え
客思倍従来 客思(かくし) 従来に倍(ばい)す
⊂訳⊃
安南の地は 気候風土が異なり
寒さは遅く 暖かになるのは早い
冬のさ中に 山の木の実が熟し
正月には 野草の花が咲く
長雨が 濃い霧をもたらし
霜が降れば 雷が鳴る
故郷は 万里の彼方
春が来れば 旅の愁いはいや増すのだ
⊂ものがたり⊃ 詩題の「安南」(あんなん)はベトナム北部の地名で、「交趾」はその別名です。はじめの二句でベトナム北部の地は寒くなるのが遅く、暖かくなるのは早いと気候を概観します。中四句は華北との気候風土の違いを敷衍するもので、「仲冬」(冬十一月)に木の実が熟し、正月には野の花が咲いていると詠います。
洛陽の住人杜審言にとって、北との気候の違いはとても印象的であったのでしょう。気候を紹介して、結びでは望郷の思いを述べますが、宮廷詩特有の煩瑣な表現はなくなり、個人的な詩に変化しています。
旅寓安南 安南に旅寓す
交趾殊風候 交趾(こうし) 風候(ふうこう)殊(こと)なり
寒遅暖復催 寒(かん)遅くして 暖 復(また)た催(もよお)す
仲冬山果熟 仲冬(ちゅうとう) 山果(さんか)熟し
正月野花開 正月(しょうがつ) 野花(やか)開く
積雨生昏霧 積雨(せきう) 昏霧(こんむ)を生じ
軽霜下震雷 軽霜(けいそう) 震雷(しんらい)を下(くだ)す
故郷踰万里 故郷(こきょう) 万里を踰(こ)え
客思倍従来 客思(かくし) 従来に倍(ばい)す
⊂訳⊃
安南の地は 気候風土が異なり
寒さは遅く 暖かになるのは早い
冬のさ中に 山の木の実が熟し
正月には 野草の花が咲く
長雨が 濃い霧をもたらし
霜が降れば 雷が鳴る
故郷は 万里の彼方
春が来れば 旅の愁いはいや増すのだ
⊂ものがたり⊃ 詩題の「安南」(あんなん)はベトナム北部の地名で、「交趾」はその別名です。はじめの二句でベトナム北部の地は寒くなるのが遅く、暖かくなるのは早いと気候を概観します。中四句は華北との気候風土の違いを敷衍するもので、「仲冬」(冬十一月)に木の実が熟し、正月には野の花が咲いていると詠います。
洛陽の住人杜審言にとって、北との気候の違いはとても印象的であったのでしょう。気候を紹介して、結びでは望郷の思いを述べますが、宮廷詩特有の煩瑣な表現はなくなり、個人的な詩に変化しています。