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ティェンタオの自由訳漢詩 1890

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 初唐30ー陳子昂
    燕昭王             燕の昭王

  南登碣石館     南のかた  碣石館(けつせきかん)に登り
  遥望黄金台     遥かに黄金台(おうごんだい)を望む
  丘陵尽喬木     丘陵  尽(ことごと)く喬木(きょうぼく)
  昭王安在哉     昭王  安(いず)くに在りや
  覇図悵已矣     覇図(はと)  悵(ちょう)として已(や)んぬるかな
  駆馬復帰来     馬を駆って  復(ま)た帰り来たる

  ⊂訳⊃
          南のかた   碣石館の跡に登り
          はるかに   黄金台の方角を望む
          見渡す丘は  巨木に蔽われ
          燕の昭王は  どこへ行ってしまったのか
          痛ましくも   覇業の跡は消え去り
          馬を走らせ  来た道をまたもどる


 ⊂ものがたり⊃ 「燕の昭王」は「軒轅台」と同じく「薊丘覧古」七首の一首で、戦国時代の燕(えん)の昭王(しょうおう)の遺跡を訪ねたときの詩です。薊丘(けいきゅう)の南にある碣石館の跡に登って黄金台の方を眺めると、丘陵には「喬木」(高い木)が生い茂っています。
 「碣石館」は燕の昭王が稷下(しょっか)の学者鄒衍(すうえん)を招いて師事したところ。「黄金台」は天下の賢者を招くために昭王が建てたとされる台で、台上に千金を置いて賢者への贈り物としたと伝えられます。
 そんな昭王の覇業の地も、いまは喬木に覆い尽くされ消えてしまっています。結びの「馬を駆って 復た帰り来たる」の一句に、時代に対する陳子昂の深い失望感が刻まれているようです。

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