初唐28ー李嬌
柳 柳
揚柳鬱氳氳 揚柳(ようりゅう) 鬱(うつ)として氤氳(いんうん)
金堤総翠氛 金堤(きんてい) 総(すべ)て翠(みどり)の氛(ふん)
庭前花類雪 庭前(ていぜん) 花は雪に類(たぐい)し
楼際葉如雲 楼際(ろうさい) 葉は雲の如し
列宿分龍影 列宿(れつしゅく) 龍影(りゅうえい)を分かち
芳池写鳳文 芳池(ほうち) 鳳文(ほうぶん)を写す
短簫何以奏 短簫(たんしょう) 何を以て奏(そう)せん
攀折為思君 攀折(はんせつ)し 為(ため)に君を思う
⊂訳⊃
柳の木には 鬱とした気がやどり
宮城の堤に みどりの靄が立ち込める
庭に柳絮は 雪のように舞い
楼閣の側で 葉は雲のように茂る
空の星宿は 龍影を分けて居並び
美しい池に 鳳凰の模様を映す
どんな心で 短簫を吹けばいいのだろうか
枝を折って 君を見送るときのように
⊂ものがたり⊃ 詩は「柳」という詠題を与えられて、楽府題の「折揚柳」に結びつけて詠っています。前半の四句で「金堤」(宮城を囲む堤)に生えている揚柳を描きます。「花」というのは春に舞う柳絮(りゅうじょ)のことで、雪のように空中を舞って散ります。
後半はじめの二句は、詠題を与えられたときの宮殿のようすでしょう。「列宿」は夜空に並ぶ星宿のことで、それが龍(皇帝)の座を挟んで居並んでいます。廷臣が居並ぶことを星宿に喩え、庭の池には「鳳文」(鳳凰の文様)が映っていると寿ぎます。
そして最後は、心の友を見送るときの歌「折揚柳」になぞらえて締めくくるのです。こうした配慮のゆきとどいた詩が当時の宮中の詩でした。
武后朝の最後、李嬌は神龍元年の政変で地方へ流されますが、数か月で都に呼びもどされ、中宗朝で趙国公・兵部尚書同中書門下三品にまで栄進します。大変な出世です。しかし、玄宗皇帝が即位すると、中宗時代に書いた上書に咎を発見されて死刑になるところでした。減刑されて虔州ついで廬州に流され、その地で亡くなりました。享年は七十歳です。
柳 柳
揚柳鬱氳氳 揚柳(ようりゅう) 鬱(うつ)として氤氳(いんうん)
金堤総翠氛 金堤(きんてい) 総(すべ)て翠(みどり)の氛(ふん)
庭前花類雪 庭前(ていぜん) 花は雪に類(たぐい)し
楼際葉如雲 楼際(ろうさい) 葉は雲の如し
列宿分龍影 列宿(れつしゅく) 龍影(りゅうえい)を分かち
芳池写鳳文 芳池(ほうち) 鳳文(ほうぶん)を写す
短簫何以奏 短簫(たんしょう) 何を以て奏(そう)せん
攀折為思君 攀折(はんせつ)し 為(ため)に君を思う
⊂訳⊃
柳の木には 鬱とした気がやどり
宮城の堤に みどりの靄が立ち込める
庭に柳絮は 雪のように舞い
楼閣の側で 葉は雲のように茂る
空の星宿は 龍影を分けて居並び
美しい池に 鳳凰の模様を映す
どんな心で 短簫を吹けばいいのだろうか
枝を折って 君を見送るときのように
⊂ものがたり⊃ 詩は「柳」という詠題を与えられて、楽府題の「折揚柳」に結びつけて詠っています。前半の四句で「金堤」(宮城を囲む堤)に生えている揚柳を描きます。「花」というのは春に舞う柳絮(りゅうじょ)のことで、雪のように空中を舞って散ります。
後半はじめの二句は、詠題を与えられたときの宮殿のようすでしょう。「列宿」は夜空に並ぶ星宿のことで、それが龍(皇帝)の座を挟んで居並んでいます。廷臣が居並ぶことを星宿に喩え、庭の池には「鳳文」(鳳凰の文様)が映っていると寿ぎます。
そして最後は、心の友を見送るときの歌「折揚柳」になぞらえて締めくくるのです。こうした配慮のゆきとどいた詩が当時の宮中の詩でした。
武后朝の最後、李嬌は神龍元年の政変で地方へ流されますが、数か月で都に呼びもどされ、中宗朝で趙国公・兵部尚書同中書門下三品にまで栄進します。大変な出世です。しかし、玄宗皇帝が即位すると、中宗時代に書いた上書に咎を発見されて死刑になるところでした。減刑されて虔州ついで廬州に流され、その地で亡くなりました。享年は七十歳です。