初唐27ー李嬌
雀 雀
大厦初成日 大厦(たいか) 初めて成(な)るの日
嘉賓集杏梁 嘉賓(かひん) 杏梁(きょうりょう)に集まる
銜書表周瑞 書を銜(ふく)んで周瑞(しゅうずい)を表し
入幕応王祥 幕(とばり)に入りて王祥(おうしょう)に応ず
暮宿空城裏 暮(くれ)に空城(くうじょう)の裏(うち)に宿し
朝游漣水傍 朝(あした)に漣水(れんすい)の傍(かたわ)らに游ぶ
願斉鴻鵠志 願わくは鴻鵠(こうこく)の志を斉(ひと)しくせん
希逐鳳凰翔 希(こいねが)わくは鳳凰(ほうおう)の翔(と)ぶを逐(お)わん
⊂訳⊃
大廈高楼が完成したこの日
めでたい雀が 杏の横木に集まっている
周の瑞祥を 口にくわえて飛んできて
部屋に入って 王祥の悩みに応える
日暮れには 静かな街中でやすみ
朝になると さざ波の川辺の上を飛びまわる
雀たちよ 鴻鵠の志を持とうではないか
鳳凰の後について 大空高く飛びたいものだ
⊂ものがたり⊃ 李嬌(りきょう)は趙州賛皇(河北省)の人。名家に生まれ二十歳になる前に進士に及第し、高宗のときに嶺南の夷族を説諭した功によって給事中になります。一時、潤州(江蘇省鎮江市)の司馬に左遷されますが、武后時代になると優遇され重要な文書の起草に与かるようになります。
李嬌は武后・中宗期に栄達を遂げ、多くの宮中侍宴応制の詩を作っています。日本では詠物詩が有名で、平安・鎌倉・南北朝時代に流行しました。
雀は中国では縁起の良い鳥とされ、ここでは「嘉賓」(大切な客)に擬されています。初句の「大厦」は大きな建築物のことで、宮殿か邸宅が完成し、その祝賀の宴で披露した詩でしょう。
まず、祝賀の客が「杏梁」(杏の木で作った梁)に集まっていると、貴人高官たちの居並ぶさまを描きます。つぎの二句は雀に関する故事を踏まえており、周王朝が始まるときに雀が瑞祥を咥えて飛んで来たことを詠います。武后は唐を周に変えましたので、即位の後であれば、武周革命を祝賀していることになります。
「王祥」は継母への孝行で知られ、継母が雀の炙り肉を食べたいというので思案に暮れていると、雀が何十羽も飛んできて王祥の孝心に応えたといいます。つぎの二句は雀(宮廷人)の生活を描き、夜は「空城」(静かな街中)で休み、朝は餌をさがして川辺で飛びまわるといいます。宮中に集う官吏を比喩的に描くものでしょう。
そして結びでは、「鴻鵠」「鳳凰」といっためでたい鳥を出してきて祝賀の気分を盛り上げます。詠物詩といっても、雀を題材にしながら列席者に呼びかける形で、自分の祝意を述べる宮廷詩です。
雀 雀
大厦初成日 大厦(たいか) 初めて成(な)るの日
嘉賓集杏梁 嘉賓(かひん) 杏梁(きょうりょう)に集まる
銜書表周瑞 書を銜(ふく)んで周瑞(しゅうずい)を表し
入幕応王祥 幕(とばり)に入りて王祥(おうしょう)に応ず
暮宿空城裏 暮(くれ)に空城(くうじょう)の裏(うち)に宿し
朝游漣水傍 朝(あした)に漣水(れんすい)の傍(かたわ)らに游ぶ
願斉鴻鵠志 願わくは鴻鵠(こうこく)の志を斉(ひと)しくせん
希逐鳳凰翔 希(こいねが)わくは鳳凰(ほうおう)の翔(と)ぶを逐(お)わん
⊂訳⊃
大廈高楼が完成したこの日
めでたい雀が 杏の横木に集まっている
周の瑞祥を 口にくわえて飛んできて
部屋に入って 王祥の悩みに応える
日暮れには 静かな街中でやすみ
朝になると さざ波の川辺の上を飛びまわる
雀たちよ 鴻鵠の志を持とうではないか
鳳凰の後について 大空高く飛びたいものだ
⊂ものがたり⊃ 李嬌(りきょう)は趙州賛皇(河北省)の人。名家に生まれ二十歳になる前に進士に及第し、高宗のときに嶺南の夷族を説諭した功によって給事中になります。一時、潤州(江蘇省鎮江市)の司馬に左遷されますが、武后時代になると優遇され重要な文書の起草に与かるようになります。
李嬌は武后・中宗期に栄達を遂げ、多くの宮中侍宴応制の詩を作っています。日本では詠物詩が有名で、平安・鎌倉・南北朝時代に流行しました。
雀は中国では縁起の良い鳥とされ、ここでは「嘉賓」(大切な客)に擬されています。初句の「大厦」は大きな建築物のことで、宮殿か邸宅が完成し、その祝賀の宴で披露した詩でしょう。
まず、祝賀の客が「杏梁」(杏の木で作った梁)に集まっていると、貴人高官たちの居並ぶさまを描きます。つぎの二句は雀に関する故事を踏まえており、周王朝が始まるときに雀が瑞祥を咥えて飛んで来たことを詠います。武后は唐を周に変えましたので、即位の後であれば、武周革命を祝賀していることになります。
「王祥」は継母への孝行で知られ、継母が雀の炙り肉を食べたいというので思案に暮れていると、雀が何十羽も飛んできて王祥の孝心に応えたといいます。つぎの二句は雀(宮廷人)の生活を描き、夜は「空城」(静かな街中)で休み、朝は餌をさがして川辺で飛びまわるといいます。宮中に集う官吏を比喩的に描くものでしょう。
そして結びでは、「鴻鵠」「鳳凰」といっためでたい鳥を出してきて祝賀の気分を盛り上げます。詠物詩といっても、雀を題材にしながら列席者に呼びかける形で、自分の祝意を述べる宮廷詩です。