清42ー陳文述
月夜聞紡織声三首 其二 月夜 紡織の声を聞く 三首 其の二
茅檐辛苦倦難支 茅檐(ぼうえん)の辛苦 倦(う)みて支(ささ)え難し
繡閣嬌憨定不知 繡閣(しゅうかく)の嬌憨(きょうかん) 定めて知らざらん
多少呉姫厭羅縠 多少の呉姫(ごき)か 羅縠(らこく)に厭(あ)きたる
緑窓一様夜眠遅 緑窓(りょくそう) 一様(いちよう) 夜眠(やみん)遅し
⊂訳⊃
茅葺の家の辛苦は 見るに堪えないほどだ
楼閣の娘たちは そんなことに関心はない
どれほどの妓女が 薄絹の衣に満ち足りていることか
緑の縁取りの窓は 夜半まで明るく眠りはおそい
⊂ものがたり⊃ 陳文述(ちんぶんじゅつ:1771―1842)は銭塘(浙江省銭塘県)の人。乾隆三十六年(1771)に生まれました。嘉慶五年(1800)に三十歳で挙人にあげられ、各地の知県を歴任します。若いころから詩名が高く、艶麗な詩風が注目されました。晩年には社会に目を向けるようになり、道光二十三年になくなります。享年七十三歳です。
詩題の「紡織(ぼうしょく)の声」は機織りの織り機の音です。「月夜」(げつや)、つまり月の明るい夜に貧しげな家から機を織る音が洩れてくるのを聴きます。その音に触発されて思いを詠う詩です。
はじめ二句の「茅檐」は茅葺の家。その家の貧しさは見るに堪えないほどです。「繡閣」は豪華な建物、「嬌憨」は愛らしいが淺はかな女の意味で、後半に「呉姫」とありますので妓楼の女をいうのでしょう。後半の「呉姫」は妓女をさす言葉で、「羅縠」は薄絹です。茅檐の紡織は絹を織っているのですが、妓楼の女たちは薄絹の衣裳にあいています。
最後を「緑窓 一様 夜眠遅し」と結んで、妓楼の窓が夜遅くまで明るく輝き、賑わっていることを指摘します。貧しい機織りの娘と着飾った妓楼の女を対比して世の不平等を嘆く詩であり、社会に目をむけた晩年の作です。
月夜聞紡織声三首 其二 月夜 紡織の声を聞く 三首 其の二
茅檐辛苦倦難支 茅檐(ぼうえん)の辛苦 倦(う)みて支(ささ)え難し
繡閣嬌憨定不知 繡閣(しゅうかく)の嬌憨(きょうかん) 定めて知らざらん
多少呉姫厭羅縠 多少の呉姫(ごき)か 羅縠(らこく)に厭(あ)きたる
緑窓一様夜眠遅 緑窓(りょくそう) 一様(いちよう) 夜眠(やみん)遅し
⊂訳⊃
茅葺の家の辛苦は 見るに堪えないほどだ
楼閣の娘たちは そんなことに関心はない
どれほどの妓女が 薄絹の衣に満ち足りていることか
緑の縁取りの窓は 夜半まで明るく眠りはおそい
⊂ものがたり⊃ 陳文述(ちんぶんじゅつ:1771―1842)は銭塘(浙江省銭塘県)の人。乾隆三十六年(1771)に生まれました。嘉慶五年(1800)に三十歳で挙人にあげられ、各地の知県を歴任します。若いころから詩名が高く、艶麗な詩風が注目されました。晩年には社会に目を向けるようになり、道光二十三年になくなります。享年七十三歳です。
詩題の「紡織(ぼうしょく)の声」は機織りの織り機の音です。「月夜」(げつや)、つまり月の明るい夜に貧しげな家から機を織る音が洩れてくるのを聴きます。その音に触発されて思いを詠う詩です。
はじめ二句の「茅檐」は茅葺の家。その家の貧しさは見るに堪えないほどです。「繡閣」は豪華な建物、「嬌憨」は愛らしいが淺はかな女の意味で、後半に「呉姫」とありますので妓楼の女をいうのでしょう。後半の「呉姫」は妓女をさす言葉で、「羅縠」は薄絹です。茅檐の紡織は絹を織っているのですが、妓楼の女たちは薄絹の衣裳にあいています。
最後を「緑窓 一様 夜眠遅し」と結んで、妓楼の窓が夜遅くまで明るく輝き、賑わっていることを指摘します。貧しい機織りの娘と着飾った妓楼の女を対比して世の不平等を嘆く詩であり、社会に目をむけた晩年の作です。