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ティェンタオの自由訳漢詩 1885

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 初唐25ー蘇味道
   正月十五夜          正月十五の夜

  火樹銀花合     火樹(かじゅ)  銀花(ぎんか)合(がっ)し
  星橋鉄鎖開     星橋(せいきょう)  鉄鎖(てつさ)開く
  暗塵随馬去     暗塵(あんじん)   馬に随って去り
  明月逐人来     明月(めいげつ)   人を逐(お)うて来たる
  游伎皆穠李     游伎(ゆうぎ)は皆  穠李(じょうり)
  行歌尽落梅     行歌(こうか)は尽(ことどと)く落梅(らくばい)
  金吾不禁夜     金吾(きんご)     夜を禁ぜず
  玉漏莫相催     玉漏(ぎょくろう)   相催(あいうなが)すこと莫(なか)れ

  ⊂訳⊃
          元宵の灯籠が  白銀の花のように街を彩り
          宮門の橋にも  灯籠が列なって通行は自由だ
          闇に舞う塵は  馬の歩みとともに消え
          空の名月は   道ゆく人を追ってくる
          妓女たちは   李(すもも)の花のようにそぞろ歩いて
          歩きつつ唄う  歌はことごとく「梅花落」
          金吾の役人も  夜歩きを咎めたりはしない
          水時計よ    今夜はどうかゆっくりと進んでくれ


 ⊂ものがたり⊃ 則天武后の治下で登用された進士及第者は、自分たちが所を得ているという幸福感に包まれていたようです。蘇味道(そみどう:648?ー705?)は趙州欒城(河北省)の人。高宗の乾封二年(667)に二十歳の若さで進士に及第し、累進して武后の延歳元年(694)に鳳閣舎人(中書舎人)になります。
 詩題の「正月十五夜」は上元節、元宵の夜です。上元節には戸外に灯籠を飾る習わしがあり、龍や鶏などいろいろな形をした灯籠を樹木や傘などの形をした棚に吊り下げました。それを「火樹 銀花合し」というのです。
 当時は城内での夜間外出は禁止されていましたが、上元節の前後三日間だけは夜間外出が許され、一晩中酒を飲み歌いかつ踊って楽しみました。洛陽の宮城前にある橋も夜間の通行が許され、そこにも灯籠が飾られていました。
 中四句では馬に乗った貴人や道路を歩く人々を描きます。元宵の夜は若い娘たちも着飾って外出し、歩きながら歌うのは「梅花落」の歌です。結びの二句では、元宵の夜の楽しさを強調します。「金吾」は宮城や都内の治安に当たる金吾衛の兵のことで、この夜だけは夜歩きを咎めたりしません。宮中の水時計よ、ゆっくりと進んでくれと元宵の夜が終わるのを惜しむのです。

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