明42ー譚元春
甁 梅 瓶 梅
入甁過十日 瓶(かめ)に入りて十日(じゅうじつ)を過ぎ
愁落幸開遅 落つるを愁(うれ)うるも 幸(さいわ)いに開くこと遅し
不借春風発 春風(しゅんぷう)を借(か)りずして発(ひら)き
全無夜雨欺 全(まった)く夜雨(やう)に欺(そむ)かるること無し
香来淸浄裏 香(こう)は清浄(せいじょう)の裏(うら)に来たり
韻在寂寥時 韻(いん)は寂寥(せきりょう)の時(とき)に在り
絶勝山中樹 絶(はなは)だ勝(まさ)る 山中の樹(き)の
遊人或未知 遊人(ゆうじん) 或(ある)いは未(いま)だ知らざるに
⊂訳⊃
瓶に活けられて十日が過ぎ
散るのを心配したが 幸いにも遅く咲いた
春風の力を借りずに咲き
夜の雨にうたれることもない
香りは清らかなままに流れ
もの静かな姿を保っている
山中の樹の中で 梅が一番と
知らない人も いるのではなかろうか
⊂ものがたり⊃ 譚元春(たんげんしゅん:1586―1637)は竟陵(湖北省天門市)の人。神宗の万暦十四年(1586)に生まれ、同郷の先輩鍾惺とともに竟陵派を創始します。熹宗の天啓七年(1627)、四十二歳で郷試に解元(首席)で及第しますが、それは鍾惺の没後三年のことでした。毅宗の崇禎十年(1637)に亡くなり、享年五十二歳です。
詩題の「甁梅」(へいばい)は花瓶の梅。はじめ六句は瓶に活けられた梅の思いを叙する形になっています。瓶梅は家のなかに置かれているので、風雨にさらされることもありません。頚聯の「韻は寂寥の時に在り」は「香」の句と対句になっていますので、「韻」は風韻、趣のある姿の意味でしょう。それが「寂寥」(寂しくもの静か)の時を保っています。尾聯の二句は作者の問いかけでしょう。「甁梅」が山中の樹から採って来たものであることを窺わせます。
甁 梅 瓶 梅
入甁過十日 瓶(かめ)に入りて十日(じゅうじつ)を過ぎ
愁落幸開遅 落つるを愁(うれ)うるも 幸(さいわ)いに開くこと遅し
不借春風発 春風(しゅんぷう)を借(か)りずして発(ひら)き
全無夜雨欺 全(まった)く夜雨(やう)に欺(そむ)かるること無し
香来淸浄裏 香(こう)は清浄(せいじょう)の裏(うら)に来たり
韻在寂寥時 韻(いん)は寂寥(せきりょう)の時(とき)に在り
絶勝山中樹 絶(はなは)だ勝(まさ)る 山中の樹(き)の
遊人或未知 遊人(ゆうじん) 或(ある)いは未(いま)だ知らざるに
⊂訳⊃
瓶に活けられて十日が過ぎ
散るのを心配したが 幸いにも遅く咲いた
春風の力を借りずに咲き
夜の雨にうたれることもない
香りは清らかなままに流れ
もの静かな姿を保っている
山中の樹の中で 梅が一番と
知らない人も いるのではなかろうか
⊂ものがたり⊃ 譚元春(たんげんしゅん:1586―1637)は竟陵(湖北省天門市)の人。神宗の万暦十四年(1586)に生まれ、同郷の先輩鍾惺とともに竟陵派を創始します。熹宗の天啓七年(1627)、四十二歳で郷試に解元(首席)で及第しますが、それは鍾惺の没後三年のことでした。毅宗の崇禎十年(1637)に亡くなり、享年五十二歳です。
詩題の「甁梅」(へいばい)は花瓶の梅。はじめ六句は瓶に活けられた梅の思いを叙する形になっています。瓶梅は家のなかに置かれているので、風雨にさらされることもありません。頚聯の「韻は寂寥の時に在り」は「香」の句と対句になっていますので、「韻」は風韻、趣のある姿の意味でしょう。それが「寂寥」(寂しくもの静か)の時を保っています。尾聯の二句は作者の問いかけでしょう。「甁梅」が山中の樹から採って来たものであることを窺わせます。