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ティェンタオの自由訳漢詩 元ー范梈

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 元7ー范梈
    登沓磊駅楼            沓磊の駅楼に登り
    自此度海              此れより海を度る

  半生長以客為家   半生(はんせい)  長(つね)に客(たび)を以て家と為(な)す
  罷直初来瀚海楂   直(ちょく)を罷(や)めて初めて来たる  瀚海(かんかい)の楂(いかだ)
  始信人間行不尽   始めて信ず    人間(じんかん)は行けども尽きず
  天涯更復有天涯   天涯(てんがい)  更に復(ま)た天涯有るを

  ⊂訳⊃
          いつも旅ぐらし  半生を生きてきた

          こんど職を辞し  はじめてゴビの砂漠をわたる

          人の世は   ゆけどもゆけども果てしなく

          天の果てに  また果てがあるのを理解した


 ⊂ものがたり⊃ 詩人たちの運命は華やかなものではありませんでしたが、范梈(はんほう)とつぎの掲傒斯(けいけいし)は後世、元四大家にかぞえられています。
 范梈(1272ー1330)は清江(湖北省恩施県)の人。度宗の咸淳八年(1272)に南宋の貧家に生まれました。五歳のとき都臨安が陥落して元の世になります。各地を放浪し、詩文を売って生活していましたが、三十六歳のとき大都(北京)にのぼり、元に仕えて翰林院編修官になります。閩海道知事などを歴任し、晩年になって郷里に隠棲します。文宗の至順元年(1330)になくなり、享年五十九歳です。
 詩題の「沓磊駅」(とうらいえき)は不詳です。詩中に「瀚海」(ゴビ砂漠)がありますので西北辺境の宿駅でしょう。「直」は宮中に仕えること。職を辞してから西方に旅をしたようです。「楂」(槎)は筏のことで、砂漠を越えてゆく馬や駱駝を海槎または陸槎といいました。後半は作者の感慨で、「人間」は人間世界のこと。人の世が広くさまざまであると驚きを詠います。

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