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ティェンタオの自由訳漢詩 2294

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 南宋47ー劉克荘
   北来人 其二      北より来たりし人 其の二

  十口同離仳     十口(じっこう)  同じく離仳(りひ)し
  今成独雁飛     今  独雁(どくがん)と成(な)って飛ぶ
  飢鋤荒寺菜     飢えては荒寺(こうじ)の菜(さい)を鋤(す)き
  貧著陥蕃衣     貧しくして陥蕃(かんばん)の衣(ころも)を着る
  甲第歌鍾沸     甲第(こうてい)には歌鍾(かしょう)沸き
  沙場探騎稀     沙場(さじょう)には探騎(たんき)稀(まれ)なり
  老身閩地死     老身(ろうしん)  閩(びん)の地に死し
  不見翠鑾帰     翠鑾(すいらん)の帰るを見ざらん

  ⊂訳⊃
          家族十人は  離ればなれとなり
          私はいま   ひとりぼっちの雁となって飛んできた
          飢えては   荒れ寺で野菜をつくり
          貧しいので  占領地にいたときの服のままだ
          お屋敷では  歌舞音曲のにぎわいだが
          北の砂漠に  斥候の騎馬のでるのも稀という
          老いて私は  故郷に骨を埋めるだろう
          都にもどる翠輦を  目にすることもかなわずに


 ⊂ものがたり⊃ 其の二の詩では北から来た人々の苦難の生活を描き、講和に安住している政府高官を批判します。「十口」は十人の家族。家族は散りじりになって、自分はいま孤独な雁となって南へやってきた。「陥蕃の衣」は占領地の蛮夷の服装のことで、貧しいので北にいたときの衣服をそのまま着ていると詠います。
 後半の「甲第」は立派な屋敷。高位高官の邸宅では歌や音楽で賑やかだが、「沙場」(砂漠)には斥候の騎兵も稀だと政府の消極策を批判します。尾聯の「閩」は福建省のことで、作者の出身地です。老いた自分は、やがて故郷に骨を埋めることになるだろう。「翠鑾」(天子の乗輿)が古都にもどるのを見ることもできずにと結びます。

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