南宋47ー劉克荘
北来人 其二 北より来たりし人 其の二
十口同離仳 十口(じっこう) 同じく離仳(りひ)し
今成独雁飛 今 独雁(どくがん)と成(な)って飛ぶ
飢鋤荒寺菜 飢えては荒寺(こうじ)の菜(さい)を鋤(す)き
貧著陥蕃衣 貧しくして陥蕃(かんばん)の衣(ころも)を着る
甲第歌鍾沸 甲第(こうてい)には歌鍾(かしょう)沸き
沙場探騎稀 沙場(さじょう)には探騎(たんき)稀(まれ)なり
老身閩地死 老身(ろうしん) 閩(びん)の地に死し
不見翠鑾帰 翠鑾(すいらん)の帰るを見ざらん
⊂訳⊃
家族十人は 離ればなれとなり
私はいま ひとりぼっちの雁となって飛んできた
飢えては 荒れ寺で野菜をつくり
貧しいので 占領地にいたときの服のままだ
お屋敷では 歌舞音曲のにぎわいだが
北の砂漠に 斥候の騎馬のでるのも稀という
老いて私は 故郷に骨を埋めるだろう
都にもどる翠輦を 目にすることもかなわずに
⊂ものがたり⊃ 其の二の詩では北から来た人々の苦難の生活を描き、講和に安住している政府高官を批判します。「十口」は十人の家族。家族は散りじりになって、自分はいま孤独な雁となって南へやってきた。「陥蕃の衣」は占領地の蛮夷の服装のことで、貧しいので北にいたときの衣服をそのまま着ていると詠います。
後半の「甲第」は立派な屋敷。高位高官の邸宅では歌や音楽で賑やかだが、「沙場」(砂漠)には斥候の騎兵も稀だと政府の消極策を批判します。尾聯の「閩」は福建省のことで、作者の出身地です。老いた自分は、やがて故郷に骨を埋めることになるだろう。「翠鑾」(天子の乗輿)が古都にもどるのを見ることもできずにと結びます。
北来人 其二 北より来たりし人 其の二
十口同離仳 十口(じっこう) 同じく離仳(りひ)し
今成独雁飛 今 独雁(どくがん)と成(な)って飛ぶ
飢鋤荒寺菜 飢えては荒寺(こうじ)の菜(さい)を鋤(す)き
貧著陥蕃衣 貧しくして陥蕃(かんばん)の衣(ころも)を着る
甲第歌鍾沸 甲第(こうてい)には歌鍾(かしょう)沸き
沙場探騎稀 沙場(さじょう)には探騎(たんき)稀(まれ)なり
老身閩地死 老身(ろうしん) 閩(びん)の地に死し
不見翠鑾帰 翠鑾(すいらん)の帰るを見ざらん
⊂訳⊃
家族十人は 離ればなれとなり
私はいま ひとりぼっちの雁となって飛んできた
飢えては 荒れ寺で野菜をつくり
貧しいので 占領地にいたときの服のままだ
お屋敷では 歌舞音曲のにぎわいだが
北の砂漠に 斥候の騎馬のでるのも稀という
老いて私は 故郷に骨を埋めるだろう
都にもどる翠輦を 目にすることもかなわずに
⊂ものがたり⊃ 其の二の詩では北から来た人々の苦難の生活を描き、講和に安住している政府高官を批判します。「十口」は十人の家族。家族は散りじりになって、自分はいま孤独な雁となって南へやってきた。「陥蕃の衣」は占領地の蛮夷の服装のことで、貧しいので北にいたときの衣服をそのまま着ていると詠います。
後半の「甲第」は立派な屋敷。高位高官の邸宅では歌や音楽で賑やかだが、「沙場」(砂漠)には斥候の騎兵も稀だと政府の消極策を批判します。尾聯の「閩」は福建省のことで、作者の出身地です。老いた自分は、やがて故郷に骨を埋めることになるだろう。「翠鑾」(天子の乗輿)が古都にもどるのを見ることもできずにと結びます。