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ティェンタオの自由訳漢詩 2293

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 南宋46ー劉克荘
   北来人 其一        北より来たりし人 其の一

  試説東都事     試(こころ)みに東都(とうと)の事を説(と)けば
  添人白髪多     人の白髪(はくはつ)を添(そ)うること多し
  寝園残石馬     寝園(しんえん)には石馬(せきば)残(そこな)われ
  廃殿泣銅駝     廃殿(はいでん)には銅駝(どうだ)泣く
  胡運占難久     胡運(こうん)    久しきこと難(かた)しと占(うらな)うも
  辺情聴易訛     辺情(へんじょう)  訛(いつわ)り易(やす)きに聴(まか)す
  淒涼旧京女     淒涼(せいりょう)なり  旧京(きゅうきょう)の女(おんな)
  妝髻尚宣和     妝髻(しょうきつ)  宣和(せんわ)を尚(たっと)ぶ

  ⊂訳⊃
          こころみに    都汴京のお話をすると
          悲しみで     白髪の増えることばかり
          天子の御陵の  石馬はこわされ
          荒れた宮殿の  銅の駱駝は泣いている
          金の命運も   永くはないという人もいるが
          辺境の噂には  出鱈目が多いのに信じている
          痛ましいのは  古い都の女たち
          衣装や髪形は  宣和の風を守っている


 ⊂ものがたり⊃ 詩題の「北より来たりし人」は金の占領地から逃れてきた人の意味です。北から逃げてきた人に成りかわって亡国の民の悲哀をのべ、政府への失望を詠います。はじめの二句で全体的な感懐をのべ、中四句二聯の対句と結びの二句で詳述します。
 「東都」は東都洛陽のことで、都汴京というべきところ漢を借りています。「寝園」は天子の陵、参道には石人石馬がならんでいました。「廃殿には銅駝泣く」は、晋の文人索靖(さくせい)が漢の洛陽の宮門にあった駱駝の像が荊のなかに埋もれているのをみて悲しんだ故事によります。「妝髻」は衣服の飾りと髪形のこと。「宣和」は北宋徽宗の年号で、旧都の女性は昔の風俗を守って天子の帰還を待っていると詠います。               

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