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ティェンタオの自由訳漢詩 2287

 南宋40ー翁巻
   即事言懐           即事 懐を言う

  賦得拙疎性     賦(ふ)し得たり  拙疎(せっそ)の性(せい)
  合令蹤跡賖     合(まさ)に蹤跡(しょうせき)をして  賖(とお)から令(し)むべし
  相親惟野客     相親しむは  惟(た)だ野客(やかく)
  所論是詩家     論ずる所は  是(こ)れ詩家
  聴雨眠僧屋     雨を聴いて  僧屋(そうおく)に眠り
  看雲立釣槎     雲を看ては  釣槎(ちょうさ)に立つ
  秋来有新句     秋来(しゅうらい)  新句(しんく)有るも
  多半為黄花     多半(たはん)は  黄花(こうか)と為(な)す

  ⊂訳⊃
          詩に詠うのは  世渡りべたのことばかり
          結局は     世間と遠い場所にいる
          親しい友は   在野の人ばかり
          論じ合うのは  詩人のこと
          雨の音を聞きながら  寺で眠り
          雲を見ながら  筏で釣りをする
          秋になって   一句浮かんだと思ったら
          おおかたは   菊の花のことだった


 ⊂ものがたり⊃ 詩題の「即事」(そくじ)は眼前の事柄を詠うことで、自己をかえりみて田園閑居の感懐をのべます。はじめの二句でまず自分の性(さが)を概観します。「拙疎」は世渡りの拙さと世事に疎いこと、「蹤跡」は足あと、行跡です。「賖」は遠い、遥かの意味で、俗世間からかけ離れていると反省、もしくは自任するのです。
 中四句ではそんな自分の日常を語ります。親しい友人は在野の者ばかり、語り合うのは詩人のこと。雨の日は寺で居眠りをし、晴れた日には雲をみながら「釣槎」(筏での釣り)をします。結びの二句では、だから秋になって「新句」(気のきいた新しい句)が浮かんでも、多くは「黄花」(菊の花)のことばかり、世間とは関係ないと詠います。 

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