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ティェンタオの自由訳漢詩 2279

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 南宋32ー林升
    題臨安邸            臨安の邸に題す

  山外青山楼外楼   山外(さんがい)の青山(せいざん)  楼外(ろうがい)の楼
  西湖歌舞幾時休   西湖(せいこ)の歌舞(かぶ)  幾時(いつ)か休(や)まん
  暖風熏得游人酔   暖風(だんぷう)  熏(くん)じ得て   游人(ゆうじん)酔(え)い
  直把杭州作汴州   直(ただ)ちに杭州を把(もっ)て汴州(べんしゅう)と作(な)す

  ⊂訳⊃
          山の彼方に青山あり  高楼は林立する

          西湖の歌舞音曲は   いつになったらやむのか

          暖かい風に吹かれて  ほろ酔い歩く人々よ

          杭州を都汴州とでも  思っているのか


 ⊂ものがたり⊃ 林升(りんしょう)は生没年不詳。経歴もつまびらかではありませんが、南宋四大家の時代に野にあった無名の知識人で、朱熹と同時代人です。孝宗の淳煕年間(1174ー1189)に士人であったといいます。詩題の「臨安(りんあん)の邸に題す」は、「臨安」(南宋の都:杭州)の旅宿の壁に書きつけた詩を意味します。
 はじめ二句は臨安の景です。遠くに緑の山々が幾重にも重なり、近くには幾つもの楼閣が競うように立ち並んでいます。「西湖」は西湖にのぞむ臨安の街を象徴的に呼んだものでしょう。都臨安は歌舞音曲に明け暮れていますが、いつやめるのかと政府当局者を批判します。
 後半、「暖風」は春の風。暖かい春風に包まれて人々はいっときの平安に酔って遊んでいるが、杭州を都「汴州」(北宋の都:河南省開封市)とでも思っているのか、と失地回復を忘れている人々を慨嘆します。 

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