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ティェンタオの自由訳漢詩 2269

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 南宋22ー范成大
   四時田園雑興           四時田園雑興 
     冬日 其八             冬日 其の八

  榾柮無煙雪夜長   榾柮(こつとつ) 煙(けむり)無くして雪夜(せつや)長し
  地爐煨酒煖如湯   地爐(ちろ)   酒を煨(わい)すれば  煖(あたた)かきこと湯(とう)の如し
  莫嗔老婦無盤飣   嗔(いか)る莫(なか)れ  老婦(ろうふ)  盤飣(ばんてい)無きを
  笑指灰中芋栗香   笑って指さす  灰中(かいちゅう)  芋栗(うりつ)の香(かんば)しきを

  ⊂訳⊃
          木切れは燃えて煙も立たず  雪の夜はながい

          囲炉裏で温めた酒は  とろりとした燗になる

          つまみがないぞと    かみさんを叱るのはよしたまえ

          笑って指さす灰の中  芋や栗が香ばしい


 ⊂ものがたり⊃ 「冬日」(とうじつ)其の八では詩中に「老婦」とありますので、雪の降る夜、近くの農家で酒をご馳走になったときの作と思われます。「榾柮」は木の切れ端で、「地爐」(囲炉裏)でよく燃えています。「煨」は包み焼きにすることですが、ここでは酒器を囲炉裏の灰に埋めて温めるのでしょう。そうすると「湯」のようになります。単に熱燗になるという以上に、とろりと温められるという意味がこめられているようです。
 そこで後半二句になりますが、作者は農家の主人と囲炉裏を囲んでいます。主人がおかみさんに「つまみがないじゃないか」と小言をいいます。すると作者が「嗔る莫れ」と制止します。結びの「笑って指さす」は「老婦」の動作と考える方が面白いようです。かみさんが笑いながら指さす灰のなかに、芋や栗が香ばしく焼けて食べごろになっています。心暖まるシーンがユーモラスに描かれていて秀逸です。
 晩年の范成大は政事から離れて田舎暮らしを楽しみ、素朴な農家の人々とまじわることに無上の安らぎを覚える心境にありました。そのことは同時に、農村が安定していることを体感することでもあります。政事に腐心する生涯を過ごしてきた范成大にとって、詩はたんに田園の閑居を楽しむだけのものではなかったと思われます。

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