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ティェンタオの自由訳漢詩 2264

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 南宋17ー范成大
     宜春苑               宜春苑

  狐塚貛蹊満路隅   狐塚(こちょう)  貛蹊(かんけい)  路隅(ろぐう)に満つ
  行人猶作御園呼   行人(こうじん)  猶(な)お作(な)す御園(ぎょえん)と呼ぶを
  連昌尚有花臨砌   連昌(れんしょう)  尚(な)お花の砌(ぜい)に臨む有り
  腸断宜春寸草無   腸(はらわた)は断(た)ゆ  宜春(ぎしゅん)  寸草(すんそう)無し

    ※ 一行目の「貛」は犭偏です。外字になるので同音の字に変えています。

  ⊂訳⊃
          路の片隅には  狐の棲みか 狼の通る径

          それでも人は  まだ御園と呼んでいる

          「連昌宮詞」にさえ   階の砌に臨んで花とあるのに

          腸も千切れるほどだ  宜春苑にはわずかの草もない


 ⊂ものがたり⊃ 詩題の「宜春苑」(ぎしゅんえん)は北宋の都汴梁の東二里のところにあった庭園です。乾道六年(1170)、国信使に任じられた范成大は、八月十一日に国境の淮水をこえ、九月九日に金の中都(北京市)にはいっています。
 その途中、旧都汴梁にたちよりますが、都門に着くまえに宜春苑の地を通過しました。転句の「連昌」は唐の宮殿の名で、中唐の詩人元稹の「連昌宮詞」に安史の乱後の「連昌宮」を詠って「上皇偏(ひと)えに愛せり 砌に臨むの花」の句があります。転結句はこの句を踏まえて、宜春苑の荒れたさまを嘆くのです。なお、「砌」(きざはし)は階の上り口の石畳のことです。 

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