南宋15ー范成大
後催租行 後の催租行 (前半八句)
老父田荒秋雨裏 老父(ろうほ)の田(はたけ)は 秋雨(しゅうう)の裏(うち)に荒れ
旧時高岸今江水 旧時(きゅうじ)の高岸(こうがん) 今は江水(こうすい)
傭耕猶自抱長飢 傭(やと)われて耕すも 猶(な)お長飢(ちょうき)を抱き
的知無力輸租米 的(まこと)に知る 租米(そべい)を輸(いた)す力無きを
自従郷官新上来 郷官(きょうかん) 新たに上り来たりしより
黄紙放尽白紙催 黄紙(こうし)放ち尽くして 白紙(はくし)催(うなが)す
売衣得銭都納却 衣(ころも)を売り銭(ぜに)を得て都(すべ)て納却(のうきゃく)し
病骨雖寒聊免縛 病骨(びょうこつ)寒しと雖(いえど)も聊(いささ)か縛(ばく)を免(まぬか)る
⊂訳⊃
老人の畑は 秋の長雨で荒れ
高い岸の上にあったのが いまは川になっている
雇われて畑仕事をするが 空腹をかかえ
年貢を納める力のないのは明白だ
新しい役人が来てから
免税の詔書に反して 勝手に税を取り立てる
着物を銭に換え どうやら完納し
寒さは骨に応えるが 逮捕だけは免れた
⊂ものがたり⊃ 詩題の「後(のち)の催租行(さいそこう)」は「催租行」のあとに同題で作ったことを示します。こうした政事批判が最初の退官の原因になったとも考えられます。はじめの四句は序で「老父」の状態をしめします。「高岸」は畑のあった場所。高い岸の上にあったのですが、秋の長雨で川になってしまいました。それで雇われて畑仕事をしていますが、いつも空腹をかかえ、年貢を納める力がありません。そのことを「的に知る」と断言します。
あと老父の訴えが十句つづくのですが、前半八句の後半四句はそのはじめの四句です。新しい「郷官」(郷のやくにん)が来て以来、「黄紙」を反故にして「白紙」を突きつけます。黄紙は天子の詔書で災害免除の通知でしょう。白紙は通常の公文書で、ここでは納税の通知書です。着物を売って納め、逮捕だけは免れたと詠います。
後催租行 後の催租行 (前半八句)
老父田荒秋雨裏 老父(ろうほ)の田(はたけ)は 秋雨(しゅうう)の裏(うち)に荒れ
旧時高岸今江水 旧時(きゅうじ)の高岸(こうがん) 今は江水(こうすい)
傭耕猶自抱長飢 傭(やと)われて耕すも 猶(な)お長飢(ちょうき)を抱き
的知無力輸租米 的(まこと)に知る 租米(そべい)を輸(いた)す力無きを
自従郷官新上来 郷官(きょうかん) 新たに上り来たりしより
黄紙放尽白紙催 黄紙(こうし)放ち尽くして 白紙(はくし)催(うなが)す
売衣得銭都納却 衣(ころも)を売り銭(ぜに)を得て都(すべ)て納却(のうきゃく)し
病骨雖寒聊免縛 病骨(びょうこつ)寒しと雖(いえど)も聊(いささ)か縛(ばく)を免(まぬか)る
⊂訳⊃
老人の畑は 秋の長雨で荒れ
高い岸の上にあったのが いまは川になっている
雇われて畑仕事をするが 空腹をかかえ
年貢を納める力のないのは明白だ
新しい役人が来てから
免税の詔書に反して 勝手に税を取り立てる
着物を銭に換え どうやら完納し
寒さは骨に応えるが 逮捕だけは免れた
⊂ものがたり⊃ 詩題の「後(のち)の催租行(さいそこう)」は「催租行」のあとに同題で作ったことを示します。こうした政事批判が最初の退官の原因になったとも考えられます。はじめの四句は序で「老父」の状態をしめします。「高岸」は畑のあった場所。高い岸の上にあったのですが、秋の長雨で川になってしまいました。それで雇われて畑仕事をしていますが、いつも空腹をかかえ、年貢を納める力がありません。そのことを「的に知る」と断言します。
あと老父の訴えが十句つづくのですが、前半八句の後半四句はそのはじめの四句です。新しい「郷官」(郷のやくにん)が来て以来、「黄紙」を反故にして「白紙」を突きつけます。黄紙は天子の詔書で災害免除の通知でしょう。白紙は通常の公文書で、ここでは納税の通知書です。着物を売って納め、逮捕だけは免れたと詠います。