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ティェンタオの自由訳漢詩 2262

 南宋15ー范成大
    後催租行            後の催租行         (前半八句)

  老父田荒秋雨裏   老父(ろうほ)の田(はたけ)は    秋雨(しゅうう)の裏(うち)に荒れ
  旧時高岸今江水   旧時(きゅうじ)の高岸(こうがん)  今は江水(こうすい)
  傭耕猶自抱長飢   傭(やと)われて耕すも   猶(な)お長飢(ちょうき)を抱き
  的知無力輸租米   的(まこと)に知る  租米(そべい)を輸(いた)す力無きを
  自従郷官新上来   郷官(きょうかん)  新たに上り来たりしより
  黄紙放尽白紙催   黄紙(こうし)放ち尽くして 白紙(はくし)催(うなが)す
  売衣得銭都納却   衣(ころも)を売り銭(ぜに)を得て都(すべ)て納却(のうきゃく)し
  病骨雖寒聊免縛   病骨(びょうこつ)寒しと雖(いえど)も聊(いささ)か縛(ばく)を免(まぬか)る

  ⊂訳⊃
          老人の畑は  秋の長雨で荒れ
          高い岸の上にあったのが  いまは川になっている
          雇われて畑仕事をするが  空腹をかかえ
          年貢を納める力のないのは明白だ
          新しい役人が来てから
          免税の詔書に反して  勝手に税を取り立てる
          着物を銭に換え    どうやら完納し
          寒さは骨に応えるが  逮捕だけは免れた


 ⊂ものがたり⊃ 詩題の「後(のち)の催租行(さいそこう)」は「催租行」のあとに同題で作ったことを示します。こうした政事批判が最初の退官の原因になったとも考えられます。はじめの四句は序で「老父」の状態をしめします。「高岸」は畑のあった場所。高い岸の上にあったのですが、秋の長雨で川になってしまいました。それで雇われて畑仕事をしていますが、いつも空腹をかかえ、年貢を納める力がありません。そのことを「的に知る」と断言します。
 あと老父の訴えが十句つづくのですが、前半八句の後半四句はそのはじめの四句です。新しい「郷官」(郷のやくにん)が来て以来、「黄紙」を反故にして「白紙」を突きつけます。黄紙は天子の詔書で災害免除の通知でしょう。白紙は通常の公文書で、ここでは納税の通知書です。着物を売って納め、逮捕だけは免れたと詠います。

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