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ティェンタオの自由訳漢詩 2260

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 南宋13ー岳飛
    満江紅  登          満江紅 黄鶴楼
    黄鶴楼有感          に登りて感有り        (下片十句)

  兵安在          兵  安(いず)くにか在る
  膏鋒鍔          鋒鍔(ほうがく)に膏(ちぬ)る
  民安在          民  安(いず)くにか在る
  塡溝壑          溝壑(こうがく)を塡(うず)む
  嘆江山如故       嘆く 江山(こうざん)は故(もと)の如くなるを
  千村寥落        千村(せんそん)は寥落(りょうらく)せるを
  何日請纓提鋭旅    何(いず)れの日にか  纓(えい)を請(こ)うて鋭旅(えいりょ)を提(ひき)い
  一鞭直渡清河洛    一鞭(いちべん)  直(ただ)ちに渡って河洛(からく)を清めん
  却帰来 再続漢陽遊 却(しりぞ)きて帰り来たり  再び漢陽(かんよう)の遊(ゆう)を続け
  騎黄鶴          黄鶴(こうかく)に騎(の)らん

  ⊂訳⊃
          兵はどこにいるのか
          敵の刃に斃れ臥す
          民はどこにいるのか
          溝や谷間を埋めている
          山川は  昔と変わらないのに
          村々の  荒れた姿は嘆かわしい
          いつの日か   大命を拝して強兵をひきい
          鞭のひと振り  長江を渡って黄河を清めよう
          凱旋して再び  南国の遊びを楽しみ
          黄鶴に乗って  飛び去ろうではないか


 ⊂ものがたり⊃ 下片のはじめ六句は、上片の憂慮を具体的にのべます。三語二句ずつ四句の重なりに力があり、多くの兵や民が犠牲になったことを詠います。そして杜甫のように山河は変わらなくても村々は荒廃していると嘆くのです。
 結びの四句では、これからの決意をのべて兵士をはげまします。「纓を請うて」は『漢書』終軍伝に終軍が長纓を請うて南越王を降した故事があり、天子の命を受けて賊徒の討伐にむかうことを意味します。「河洛」は黄河と洛水のこと、都城の地域です。「漢陽」はひろく南中国を意味し、凱旋して故郷で遊び、「黄鶴に騎らん」と詠います。
 「黄鶴」は盛唐の詩人崔(さいこう)の有名な「黄鶴楼」(ティェンタオの自由訳漢詩1928:2014.3.26のブログ参照)の詩をさしており、仙人になって天に昇ろうではないかと兵士によびかけるのです。

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