南宋10ー李清照
声声慢 声声慢 (上片十句)
尋尋覓覓 尋尋(じんじん) 覓覓(べきべき)
冷冷清清 冷冷(れいれい) 清清(せいせい)
悽悽慘慘戚戚 悽悽(せいせい) 慘慘(さんさん) 戚戚(せきせき)
乍暖還寒時候 乍(たちま)ち暖かくして 還(ま)た寒き時候(じこう)は
最難将息 最(もつと)も将息(しょうそく)し難(がた)し
三盃両盞淡酒 三盃(さんばい)両盞(りょうさん)の淡酒(たんしゅ)もて
怎敵他晩来風急 怎(いか)でか晩来(ばんらい)の風の急なるに敵(てき)せん
雁過他 雁(がん)の過(よぎ)るや
正傷心 正(まさ)に心を傷(いた)ましむ
却是旧時相識 却(かえ)って是(こ)れ 旧時(きゅうじ)の相識(そうしき)
⊂訳⊃
尋ね尋ね 求め求める
冷えびえと透きとおり
悲しくて 傷ましく そして寂しい
暖かいと思えば また寒くなる季節は
心も体も やすまるときがなく
二三杯の薄酒で
どうして 夕暮れの急な風に堪えられよう
雁が飛んで来ると
心は傷む
雁のことを 私は昔から知っていた
⊂ものがたり⊃ 詞題の「声声慢」(せいせいまん)は曲名です。晩秋の夕暮れ時のどうしようもない淋しさ、心もとなさを曲に合わせて詠います。夫の死後、生活もままならなくなった晩年の作品でしょう。上片の冒頭、二字句が七つも並べてあり、切迫した心情を訴えます。二字句は音調と意味を備えており、訳に反映させました。
つぎの四句は晩秋の不安定な気候を描き、「三盃両盞」の薄酒では日暮れの急な風に堪えられないと詠います。「怎敵他晩来風急」は「怎でか敵せん 他(か)の晩来の風の急なるに」と訓ずることもできますが、「他」は動詞の下につく接尾語と解する説によりました。 上片の結び三句は空飛ぶ雁を見上げ、雁は毎年飛んでくるが、自分の人生はいっこうに良くならないと嘆くのです。
声声慢 声声慢 (上片十句)
尋尋覓覓 尋尋(じんじん) 覓覓(べきべき)
冷冷清清 冷冷(れいれい) 清清(せいせい)
悽悽慘慘戚戚 悽悽(せいせい) 慘慘(さんさん) 戚戚(せきせき)
乍暖還寒時候 乍(たちま)ち暖かくして 還(ま)た寒き時候(じこう)は
最難将息 最(もつと)も将息(しょうそく)し難(がた)し
三盃両盞淡酒 三盃(さんばい)両盞(りょうさん)の淡酒(たんしゅ)もて
怎敵他晩来風急 怎(いか)でか晩来(ばんらい)の風の急なるに敵(てき)せん
雁過他 雁(がん)の過(よぎ)るや
正傷心 正(まさ)に心を傷(いた)ましむ
却是旧時相識 却(かえ)って是(こ)れ 旧時(きゅうじ)の相識(そうしき)
⊂訳⊃
尋ね尋ね 求め求める
冷えびえと透きとおり
悲しくて 傷ましく そして寂しい
暖かいと思えば また寒くなる季節は
心も体も やすまるときがなく
二三杯の薄酒で
どうして 夕暮れの急な風に堪えられよう
雁が飛んで来ると
心は傷む
雁のことを 私は昔から知っていた
⊂ものがたり⊃ 詞題の「声声慢」(せいせいまん)は曲名です。晩秋の夕暮れ時のどうしようもない淋しさ、心もとなさを曲に合わせて詠います。夫の死後、生活もままならなくなった晩年の作品でしょう。上片の冒頭、二字句が七つも並べてあり、切迫した心情を訴えます。二字句は音調と意味を備えており、訳に反映させました。
つぎの四句は晩秋の不安定な気候を描き、「三盃両盞」の薄酒では日暮れの急な風に堪えられないと詠います。「怎敵他晩来風急」は「怎でか敵せん 他(か)の晩来の風の急なるに」と訓ずることもできますが、「他」は動詞の下につく接尾語と解する説によりました。 上片の結び三句は空飛ぶ雁を見上げ、雁は毎年飛んでくるが、自分の人生はいっこうに良くならないと嘆くのです。