南宋6ー陳与義
牡 丹 牡 丹
一自胡塵入漢関 一(ひと)たび 胡塵(こじん)の漢関(かんかん)に入ってより
十年伊洛路漫漫 十年 伊洛(いらく) 路(みち)漫漫(まんまん)
青墩渓畔龍鐘客 青墩渓畔(せいとんけいはん) 龍鐘(りょうしょう)の客(かく)
独立東風看牡丹 独り東風(とうふう)に立って牡丹(ぼたん)を看(み)る
⊂訳⊃
夷狄の兵が 国境を越えて十年
遥かな洛陽 遠く果てしない路
青墩渓のほとりに やつれ姿の仮住まい
春風のなか ひとり佇んで牡丹をみる
⊂ものがたり⊃ 詩題の「牡丹」は洛陽の名花でした。故郷の花を江南でみての感懐です。紹興六年(1136)、四十六歳で隠退したあとの作品で、漢を借りて「漢関」といいますが、国境の意味です。
靖康元年(1126)に都汴京が陥落してから十年がたっています。「伊洛」は伊水と洛水のことで、故郷の洛陽(もしくは都の地)を意味します。そこから遠く離れてしまったと嘆くのです。「青墩渓」は浙江省桐郷県の北にあり、「龍鐘」は老いやつれたさま、涙がぽろぽろ流れるといった意味の形容詞です。異郷で老い、疲れ果て、「東風」(春風)のなか牡丹の花を眺めていると、晩年の感懐を詠います。
牡 丹 牡 丹
一自胡塵入漢関 一(ひと)たび 胡塵(こじん)の漢関(かんかん)に入ってより
十年伊洛路漫漫 十年 伊洛(いらく) 路(みち)漫漫(まんまん)
青墩渓畔龍鐘客 青墩渓畔(せいとんけいはん) 龍鐘(りょうしょう)の客(かく)
独立東風看牡丹 独り東風(とうふう)に立って牡丹(ぼたん)を看(み)る
⊂訳⊃
夷狄の兵が 国境を越えて十年
遥かな洛陽 遠く果てしない路
青墩渓のほとりに やつれ姿の仮住まい
春風のなか ひとり佇んで牡丹をみる
⊂ものがたり⊃ 詩題の「牡丹」は洛陽の名花でした。故郷の花を江南でみての感懐です。紹興六年(1136)、四十六歳で隠退したあとの作品で、漢を借りて「漢関」といいますが、国境の意味です。
靖康元年(1126)に都汴京が陥落してから十年がたっています。「伊洛」は伊水と洛水のことで、故郷の洛陽(もしくは都の地)を意味します。そこから遠く離れてしまったと嘆くのです。「青墩渓」は浙江省桐郷県の北にあり、「龍鐘」は老いやつれたさま、涙がぽろぽろ流れるといった意味の形容詞です。異郷で老い、疲れ果て、「東風」(春風)のなか牡丹の花を眺めていると、晩年の感懐を詠います。