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ティェンタオの自由訳漢詩 1876

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 初唐16ー盧照粼
   梅花落              梅花落

  梅嶺花初発     梅嶺(ばいれい) 花  初めて発(ひら)くも
  天山雪未開     天山(てんざん)  雪  未(いま)だ開かず
  雪処疑花満     雪処(せっしょ)  花の満つるを疑い
  花辺似雪廻     花辺(かへん)   雪の廻(めぐ)るに似たり
  因風入舞袖     風に因(よ)って舞袖(ぶしゅう)に入り
  雑粉向妝台     粉(おしろい)に雑(まじ)って妝台(しょうだい)に向かう
  匈奴幾万里     匈奴(きょうど)  幾万里(いくばんり)
  春至不知来     春(はる)至るも  来(き)たるを知らず

  ⊂訳⊃
          梅嶺の梅は  はやくも咲きはじめ
          天山の雪は  まだ融けないままでしょう
          雪は満開の花のように積もり
          梅は雪のように散っている
          花びらは    風に吹かれて袖に入り
          白粉に混じって鏡台の前に落ちてくる
          匈奴の地は  ここから幾万里
          春になってもお帰りのご沙汰はありません


 ⊂ものがたり⊃ 詩題の「梅花落」(ばいからく)は楽府題で、もとは梅の花の散るのを見て、親しい人や故郷と別れて暮らす悲しみを歌う民謡でした。盧照粼はその主題に五言律詩という新しい形式をあてはめ、閨怨詩を作りました。
 詩は前後二段に分かれ、前半は妻の立場から想像を交えてお互いの境遇を詠います。「梅嶺」は大庾嶺(だいゆれい:江西・湖南両省の南端を東西に走る山脈)のことで、梅の木が多いことから梅嶺と呼ばれました。その地で夫の帰りを待つという設定です。
 「天山」(新疆ウイグル自治区にある山脈)は夫が出征している地であり、梅嶺の梅は咲きはじめたが天山の雪はまだ融けないでしょうと呼びかけます。そして、積もっている雪と梅の散るさまを交差させて思いを告げるのです。
 後半は四句目の「花辺」を受けて、もっぱら自分(妻)の状況と心境を詠います。花びらは風に吹かれて袖に入り、鏡台の前に落ちてくると詠うことによって、夫の帰郷を切望する気持ちをあらわします。結びの「匈奴 幾万里」はこの詩が高宗時代の西方遠征を背景とする詩であることを示しています。
 盧照粼は才能豊かな詩人でしたが病気になり、職を辞して長安にもどり、太白山(陝西省眉県の東南)に籠もって養生に努めます。そのころ古詩の大作を書いていおり、かなりの力量を備えた詩人でした。しかし、次第に片手と足が動かなくなり、具茨山(河南省禹県)の麓に田畑を買って隠者の生活を送るようになりました。だが、疾に勝てず、家の前を流れる潁水(えいすい)に身を投じて亡くなりました。享年は四十七歳くらいです。 

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