北宋66ー秦観
春日四首 其二 春日 四首 其の二
一夕軽雷落万糸 一夕(いっせき) 軽雷(けいらい) 万糸(ばんし)を落とし
霽光浮瓦碧参差 霽光(せいこう) 瓦(かわら)に浮かんで 碧(みどり) 参差(しんし)たり
有情芍薬含春涙 情(じょう)有る芍薬(しゃくやく)は春涙(しゅんるい)を含み
無力薔薇臥暁枝 力(ちから)無き薔薇(しょうび)は暁(あかつき)の枝に臥(ふ)す
⊂訳⊃
昨夜は弱い雷が鳴って 小糠雨が降った
雨後の陽は甍に映えて 波うつ瑠璃の色
芍薬は 春の愁いに涙ぐみ
野茨は 枝にからんで暁に咲く
⊂ものがたり⊃ 「万糸」は数え切れないほどの糸で、細かい雨でしょう。「霽光」は雨あがりの陽の光。「碧」は濡れた瑠璃瓦の色のことで、それが「参差」(長短高低入り混じっているさま)とつらなっています。雨後の街並を俯瞰した見事な描写です。
其の二の詩は名作として有名ですが、とくに後半の二句は名句として名高いものです。「芍薬」と「薔薇」が対句として並置され、芍薬は泣いているように咲き、薔薇は弱々しく「暁枝」(明け方の枝)にまつわりついて咲いていると詠います。薔薇は唐代には栽培されていたそうですが、西洋バラを頭に描いてはいけません。「しょうび」は野茨のことで、ここでは野に生えている本来の野茨でしょう。
春日四首 其二 春日 四首 其の二
一夕軽雷落万糸 一夕(いっせき) 軽雷(けいらい) 万糸(ばんし)を落とし
霽光浮瓦碧参差 霽光(せいこう) 瓦(かわら)に浮かんで 碧(みどり) 参差(しんし)たり
有情芍薬含春涙 情(じょう)有る芍薬(しゃくやく)は春涙(しゅんるい)を含み
無力薔薇臥暁枝 力(ちから)無き薔薇(しょうび)は暁(あかつき)の枝に臥(ふ)す
⊂訳⊃
昨夜は弱い雷が鳴って 小糠雨が降った
雨後の陽は甍に映えて 波うつ瑠璃の色
芍薬は 春の愁いに涙ぐみ
野茨は 枝にからんで暁に咲く
⊂ものがたり⊃ 「万糸」は数え切れないほどの糸で、細かい雨でしょう。「霽光」は雨あがりの陽の光。「碧」は濡れた瑠璃瓦の色のことで、それが「参差」(長短高低入り混じっているさま)とつらなっています。雨後の街並を俯瞰した見事な描写です。
其の二の詩は名作として有名ですが、とくに後半の二句は名句として名高いものです。「芍薬」と「薔薇」が対句として並置され、芍薬は泣いているように咲き、薔薇は弱々しく「暁枝」(明け方の枝)にまつわりついて咲いていると詠います。薔薇は唐代には栽培されていたそうですが、西洋バラを頭に描いてはいけません。「しょうび」は野茨のことで、ここでは野に生えている本来の野茨でしょう。