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ティェンタオの自由訳漢詩 2238

 北宋63ー黄庭堅
   雨中登岳陽楼          雨中 岳陽楼に登り
   望君山 二首 其二       君山を望む 二首  其の二

  満川風雨独憑欄   満川(まんせん)の風雨  独り欄(らん)に憑(よ)る
  綰結湘娥十二鬟   綰結(わんけつ)す  湘娥(しょうが)の十二鬟(じゅうにかん)
  可惜不当湖水面   惜(おし)むべし    湖水の面(めん)に当たらず
  銀山堆裏看青山   銀山堆裏(ぎんざんたいり)  青山(せいざん)を看(み)る

  ⊂訳⊃
          一面の風雨  ひとりで欄干に寄りかかる

          結いあげた  湘娥の十二鬟のようだ

          残念ながら  湖面に映っているというわけにはいかず

          山のような波の向こうに  青い山が覗いている


 ⊂ものがたり⊃ 其の二の詩は「満川の風雨」のなか岳陽楼から眺める君山の景色です。岳州は洞庭湖の水が長江に流れでる湖口にあるので、「川」といっても間違いではありません。「綰結」は髪を結うこと。欄干に寄りかかって見る君山は湘娥(娥皇)の「十二鬟」(結髪の型)のようだと詠います。
 後半の二句は劉禹錫の「洞庭を望む」(ティェンタオの自由訳漢詩2121、2014.12.29のブログ参照)の転結句を意識しており、残念ながら君山は湖面に姿を映していないと詠います。劉禹錫の「白銀盤」が鏡のような湖面であるのに対して、黄庭堅の「銀山堆」はうずたかく盛り上がる波の比喩で、その向こうに「青山」が顔を覗かせているだけだというのです。
 黄庭堅はこのあと太平州に着任しますが、わずか九日で免職になり、宜州に貶謫されます。それはこの年、向太后が崩じて徽宗の親政になり、蔡京(さいきょう)を宰相に任じて新法政策に転じたからです。国政を謗ったという理由で黄庭堅の文集も禁書になりました。

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