北宋56ー王安石
鐘山即事 鐘山即事
澗水無声繞竹流 澗水(かんすい) 声無くして 竹を繞(めぐ)って流る
竹西花草弄春柔 竹西(ちくせい)の花草(かそう) 春柔(しゅんじゅう)を弄(ろう)す
芧簷相対坐終日 芧簷(ぼうえん) 相対(あいたい)して 坐(ざ)すること終日
一鳥不啼山更幽 一鳥(いっちょう)啼かず 山 更に幽(ゆう)なり
⊂訳⊃
谷川の水は 竹林をめぐって音もなく流れ
竹林のほとりでは 草花が春の柔らかさを醸しだす
茅葺の屋根の軒下で 終日山と向き合って坐している
一羽の鳥さえ鳴かず 山はいよいよ謐まりかえる
⊂ものがたり⊃ 詩題は「鐘山即事」(しょうざんそくじ)とあり、「即事」は事に即することです。目の前にある景色を詠う意味になりますが、山麓での閑居の心境を詠って即事とは言い切れない趣があります。
はじめ二句の叙景は美しい。「竹西」の西は隣といった程度の語で方角を意味しません。王安石はそうした穏やかな春の自然のなかで終日鐘山と向かい合って坐しています。その心境は「一鳥啼かず 山 更に幽なり」です。ここでの「幽」はひっそりと静まり返っていることで、静かですが底に深い悲しみが流れているように思います。
鐘山即事 鐘山即事
澗水無声繞竹流 澗水(かんすい) 声無くして 竹を繞(めぐ)って流る
竹西花草弄春柔 竹西(ちくせい)の花草(かそう) 春柔(しゅんじゅう)を弄(ろう)す
芧簷相対坐終日 芧簷(ぼうえん) 相対(あいたい)して 坐(ざ)すること終日
一鳥不啼山更幽 一鳥(いっちょう)啼かず 山 更に幽(ゆう)なり
⊂訳⊃
谷川の水は 竹林をめぐって音もなく流れ
竹林のほとりでは 草花が春の柔らかさを醸しだす
茅葺の屋根の軒下で 終日山と向き合って坐している
一羽の鳥さえ鳴かず 山はいよいよ謐まりかえる
⊂ものがたり⊃ 詩題は「鐘山即事」(しょうざんそくじ)とあり、「即事」は事に即することです。目の前にある景色を詠う意味になりますが、山麓での閑居の心境を詠って即事とは言い切れない趣があります。
はじめ二句の叙景は美しい。「竹西」の西は隣といった程度の語で方角を意味しません。王安石はそうした穏やかな春の自然のなかで終日鐘山と向かい合って坐しています。その心境は「一鳥啼かず 山 更に幽なり」です。ここでの「幽」はひっそりと静まり返っていることで、静かですが底に深い悲しみが流れているように思います。