北宋52ー王安石
夜 直 夜 直
金炉香尽漏声残 金炉(きんろ) 香(こう)尽(つ)きて 漏声(ろうせい)残(ざん)す
翦翦軽風陣陣寒 翦翦(せんせん)たる軽風(けいふう) 陣陣(じんじん)の寒(かん)
春色悩人眠不得 春色(しゅんしょく) 人を悩ませて眠り得ず
月移花影上欄干 月は花影(かえい)を移して欄干(らんかん)に上らしむ
⊂訳⊃
香炉の香は燃えつき 漏刻の音はかすかになり
肌寒い微風が吹いて 寒さはいよいよ身にしみる
春の気配に悩まされ 眠ることができずにいると
月は花影を動かして 欄干のあたりまで上らせた
⊂ものがたり⊃ 詩題の「夜直」(やちょく)は宿直のことです。翰林学士は毎夜交替で院内に宿直する定めでしたので、神宗に召し出されて翰林学士になった煕寧元年(1068)春の作とする説もあります。ここでは新法を実施していたころ、宮中に泊まりこむこともあったとする説によって解します。
はじめの二句は寝泊まりしている部屋のようすです。「漏声」は漏刻台(水時計)が時刻を告げる音、それが余韻を残して消えてゆきます。初春でしょうか、冷えこむ夜です。後半「春色」(春の気配)が自分を悩ませて眠れないと言っていますが、色恋沙汰は想定できません。もの思いにふけることを春のせいにしているのでしょう。
寝床からそとを見ると、月の明りで花の影が映し出されており、月の動きにつれて花影は移動し、欄干のあたりまで上ってきました。「花影」は比喩で、改革が緒につきはじめたことを比喩的に詠うものと解されます。
夜 直 夜 直
金炉香尽漏声残 金炉(きんろ) 香(こう)尽(つ)きて 漏声(ろうせい)残(ざん)す
翦翦軽風陣陣寒 翦翦(せんせん)たる軽風(けいふう) 陣陣(じんじん)の寒(かん)
春色悩人眠不得 春色(しゅんしょく) 人を悩ませて眠り得ず
月移花影上欄干 月は花影(かえい)を移して欄干(らんかん)に上らしむ
⊂訳⊃
香炉の香は燃えつき 漏刻の音はかすかになり
肌寒い微風が吹いて 寒さはいよいよ身にしみる
春の気配に悩まされ 眠ることができずにいると
月は花影を動かして 欄干のあたりまで上らせた
⊂ものがたり⊃ 詩題の「夜直」(やちょく)は宿直のことです。翰林学士は毎夜交替で院内に宿直する定めでしたので、神宗に召し出されて翰林学士になった煕寧元年(1068)春の作とする説もあります。ここでは新法を実施していたころ、宮中に泊まりこむこともあったとする説によって解します。
はじめの二句は寝泊まりしている部屋のようすです。「漏声」は漏刻台(水時計)が時刻を告げる音、それが余韻を残して消えてゆきます。初春でしょうか、冷えこむ夜です。後半「春色」(春の気配)が自分を悩ませて眠れないと言っていますが、色恋沙汰は想定できません。もの思いにふけることを春のせいにしているのでしょう。
寝床からそとを見ると、月の明りで花の影が映し出されており、月の動きにつれて花影は移動し、欄干のあたりまで上ってきました。「花影」は比喩で、改革が緒につきはじめたことを比喩的に詠うものと解されます。