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ティェンタオの自由訳漢詩 2223

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 北宋48ー王令
    暑旱苦熱             暑旱 熱きに苦しむ

  清風無力屠得熱   清風(せいふう)  熱を屠(ほう)り得(う)るに力(ちから)無く
  落日着翅飛上山   落日(らくじつ)   翅(つばさ)を着けて  飛んで山に上(のぼ)る
  人固已懼江海竭   人  固(もと)より已(すで)に江海(こうかい)の竭(つ)きんことを懼(おそ)れ
  天豈不惜河漢乾   天  豈(あ)に河漢(かかん)の乾くを惜(おし)まざらんや
  崑崙之高有積雪   崑崙(こんろん)の高きに  雪を積む有り
  蓬萊之遠常遺寒   蓬萊(ほうらい)の遠きに  常に寒(かん)を遺(のこ)す
  不能手提天下往   手に天下を提(ひっさ)げて往(ゆ)くこと能(あた)わずんば
  何忍身去游其間   何ぞ忍(しの)びん  身  去(ゆ)きて其の間(かん)に游ぶに
 
  ⊂訳⊃
          涼しい風も  暑さを根だやしにする力はない
          夕陽は翼をつけたように  山上にとどまっている
          人は川や海が干上がってしまうのを恐れ
          天は天の川が涸れてしまうのを惜しむはずだ
          崑崙山の頂には   雪がつもっているだろう
          蓬萊山に遠くには  いつも寒気があるだろう
          だがこの手に天下を    引っ下げてゆけないのなら
          どうして私だけが行って  寛ぐことができようか


 ⊂ものがたり⊃ 王令(おうれい:1032ー1059)は揚州広陵(江蘇省揚州市)の人。曽鞏よりも十歳あまり若く、若くして学問に励み『論語注』『孟子講義』を著します。王安石がその才能と学識の高さに驚き、自分の妻呉氏の妹と結婚させました。しかし、仁宗の嘉祐四年(1059)に夭折してしまいます。享年二十八歳の若さでした。
 詩題の「暑旱」(しょかん)は暑さとひでり。その苦しみを詠う詩ですが、天下を憂える比喩があります。詩には激しさがあり、梅堯臣・蘇舜欽の詩風をつぐものでしょう。はじめの二句は「清風」と「落日」を用いて暑さを描きます。
 中四句のはじめの対句では人は「江海」の尽きるのを恐れ、天は「河漢」の涸れるのを惜しむと旱害を憂えます。つぎの対句では伝説の「崑崙」山と「蓬萊」山を持ち出して、神仙界には雪や寒さが残っているらしいといいます。
 そして結びでは、もしそんなところがあったとしても、「天下」(世のなか全体)を引き連れて行くのでなければ、ひとりで寛ぐようなことはしないと民を思う心情を詠います。政事改革を求める若者の熱気がこもる作品です。

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