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ティェンタオの自由訳漢詩 2216

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 北宋41ー欧陽脩
     夢中作                夢中の作

  夜涼吹笛千山月   夜(よる)涼しくして笛を吹く  千山(せんざん)の月
  路暗迷人百種花   路(みち)暗くして人を迷わしむ  百種(ひゃくしゅ)の花
  棋罷不知人換世   棋(き)罷(おわ)って  人の  世を換(か)うるを知らず
  酒闌無奈客思家   酒(さけ)闌(つ)きて  客の  家を思うを奈(いかん)ともする無し

  ⊂訳⊃
          冷えびえとした夜  笛の音が流れ  山々を照らす月

          ゆく道は暗く  花は私を迷わせるかのように咲いている

          碁が済んで   いつのまにか時代は換わる

          酔いも醒めて  わが家を思う気持ちはどうしようもない


 ⊂ものがたり⊃ 詩題の「夢中(むちゅう)の作」は夢の中で作ったという意味。欧陽脩は滁州刺史の任期を終えたあとも、揚州、穎州と地方勤務を命じられ、中央に復帰できませんでした。この詩も地方勤務の不満を述べるものですが、夢の中のこととして謎めかし、故事を用いています。
 起承句は心境の比喩でしょう。暗い夜道に「人を迷わしむ 百種の花」が咲いているのは、政事家としていろいろ思い悩むことが多いのを意味します。転句の「棋罷って 人の 世を換うるを知らず」は有名な「爛柯」(らんか)の故事を踏まえています。
 南北朝時代、在る男が山に薪取りにゆくと四人の少年が碁をうっていました。面白いので夢中でみているうちに対局が終わり、持っていた斧の柄がいつのまにか腐っていました。不思議に思いながら家に帰ると、百年が過ぎていたのです。
 つまり、地方に飛ばされて「棋」(碁)のような遊びをしているうちに時代に取り残されてしまうのではないかという不安であり、そのことを誰かに訴えているのでしょう。結句では酒の酔いも醒めると、「客」(旅人、地方勤務の自分)の胸に家郷を思う気持ちが湧き起こり抑えようもないと、中央のもどりたい気持ちをほのめかします。

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