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ティェンタオの自由訳漢詩 2213

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 北宋38ー欧陽脩
    答丁元珍               丁元珍に答う

  春風疑不到天涯   春風(しゅんぷう)  疑うらくは天涯(てんがい)に到らざるかと
  二月山城未見花   二月(にがつ)    山城(さんじょう)  未(いま)だ花を見ず
  残雪圧枝猶有橘   残雪(ざんせつ)   枝を圧して猶(な)お橘(きつ)有り
  凍雷驚筍欲抽芽   凍雷(とうらい)   筍(たけのこ)を驚かして芽を抽(ひ)かんと欲す
  夜聞啼雁生郷思   夜(よる)  啼雁(ていがん)を聞いて  郷思(きょうし)生じ
  病入新年感物華   病(や)んで新年に入りて  物華(ぶっか)に感ず
  曾是洛陽花下客   曾(かつ)て是(こ)れ  洛陽(らくよう)  花下(かか)の客(かく)
  野芳雖晩不須嗟   野芳(やほう)  晩(おそ)しと雖(いえど)も  嗟(なげ)くを須(もち)いず

  ⊂訳⊃
          春風は遠いこの地まで  吹いてはこないのだろうか
          二月というのに    山あいの街ではまだ花が咲かない
          融けかかった雪は  小枝を抑えつけ橘の実だけがついている
          寒空に轟く雷鳴は  筍を驚かせて新芽を伸ばそうとする
          夜中に雁の声を聞くと  望郷の思いはつのり
          病で新年を迎えると   季節の眺めに心は揺れる
          かつて私は洛陽で  花を楽しむ旅人だった
          ここは野の花だけ  遅咲きを嘆くこともないだろう


 ⊂ものがたり⊃ 詩題の「丁元珍」(ていげんちん)は名を宝臣(ほうしん)といい、夷陵に近い峡州(湖北省宜昌県の西北)の判官でした。丁宝臣からの書信に答えて、夷陵の春の状況と心境を詠って送った作品です。整った七言律詩の首聯では、二月というのにまだ花も咲かないと、辺地にあることの不満をのぞかせます。
 頷聯ではまわりの自然をさらに詳しく述べます。「橘」は蜜柑の一種で「クネンボ」といいます。頚聯は春も遅くくるような任地での心境です。「物華」は季節の美しい眺めのこと。病気がちで新年を迎えたので、季節の眺めも心に沁みます。
 尾聯はまとめの感懐です。「洛陽 花下の客」はかつて洛陽留守推官として洛陽に在勤したことをいいます。そのとき『洛陽牡丹記』を書いていますので、花は牡丹でしょう。花の名所の洛陽で花を楽しんだこともあったが、ここに咲くのは野の花だけ、「 晩しと雖も 嗟くを須いず」と達観のポーズで締めくくります。

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