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ティェンタオの自由訳漢詩 1872

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 初唐12ー王勃
   別薛華            薛華に別る

  送送多窮路     送り送れば窮路(きゅうろ)多く
  遑遑独問津     遑遑(こうこう)として  独り津(しん)を問う
  悲涼千里道     悲涼(ひりょう)   千里の道
  凄断百年身     凄断(せいだん)  百年の身
  心事同漂泊     心事(しんじ)    同じく漂泊(ひょうはく)
  生涯共苦辛     生涯(しょうがい) 共に苦辛(くしん)
  無論去与住     去ると住(とど)まるとを論ずること無かれ
  倶是夢中人     倶(とも)に是(こ)れ  夢中(むちゅう)の人

  ⊂訳⊃
          君を送ってここまで来たが  険しい道が多かった
          これからはひとりぼっちで  行くべき道を探さねばならぬ
          君は悲しくてつらい  千里の道
          私は寂しくて苦しい  生涯の身
          寄る辺ない心でさまよい歩き
          共に苦労の人生を送るであろう
          旅立つ者と留まる者  気にするのはやめにしよう
          夢の中ではお互いに  また会うことができるのだ


 ⊂ものがたり⊃ この詩も送別詩ですが、苦渋の色を湛えています。詩題の「薛華」(せっか)は親友と思われますが、経歴は不詳です。詩は中四句を前後の二句で囲む形式で五言律詩に通じる形式美を備えています。
 はじめの二句は導入部で、当時は親しい友が旅立つとき、なごりを惜しんで途中まで同行し、ある場所まで来ると最後の別れの宴をひらくならわしでした。「津を問う」は『論語』微子篇を踏まえており、行くべき道を問うことです。
 中四句、二組の対句は重要です。まず相手と自分、お互いの今後の境遇や心境を憂えます。つぎの二句の「心事」は心の中で思っていることで、共に「漂泊」(拠り所のない)苦労の多い人生を送るであろうと、悲観的な未来を予想します。送別の詩でこんなことを言うのは異例です。だから結びの二句では、気持ちを取り直すように、夢の中ではまた会えるのだからと慰めるのです。

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