北宋26ー梅堯臣
耕 牛 耕 牛
破領耕不休 領(くび)を破りて 耕(たがや)して休(や)めず
何暇顧羸犢 何ぞ羸犢(るいとく)を顧(かえり)みるに暇(いとま)あらん
夜帰喘明月 夜に帰って 明月に喘(あえ)ぎ
朝出穿深谷 朝に出でて 深谷(しんこく)を穿(うが)つ
力雖窮田疇 力は田疇(でんちゅう)に窮(きわま)ると雖(いえど)も
腸未飽芻菽 腸(はらわた)は未(いま)だ芻菽(すうしゅく)に飽(あ)かず
稼收風雪時 稼收(かしゅう) 風雪(ふうせつ)の時
又向寒坡牧 又た寒坡(かんぱ)に向(おい)て牧(ぼく)せらる
⊂訳⊃
首の皮が擦り切れても 農耕をやめず
痩せた子牛を 顧みる暇もない
夜ふけに帰るとき 月を見上げてあえぎ
早朝に小屋を出て 深い谷間に入っていく
田圃の作業で 力は尽き果てようとしているのに
餌の秣や豆は 充分に与えられない
穫り入れが過ぎて 風雪の季節になれば
吹きさらしの丘に 放牧される
⊂ものがたり⊃ 詩題の「耕牛」(こうぎゅう)は耕す牛。農耕用の牛を描いて農民の辛苦を歌う社会詩です。農耕の牛は唐鋤や荷車の引き綱を首にかけるので、首の皮が擦り切れています。はじめの二句は、首の皮が擦り切れるほどに働かされて、子牛に心をくばる余裕もありません。
中四句はその労働のさまを詳しく述べ、早朝から夜更けまで働かされて餌も充分にあたえられません。結びの二句ではさらに追い打ちをかけ、収穫のあとの冬には「寒坡」(寒い吹きさらしの丘)に放牧され、休むときもないと詠います。
耕 牛 耕 牛
破領耕不休 領(くび)を破りて 耕(たがや)して休(や)めず
何暇顧羸犢 何ぞ羸犢(るいとく)を顧(かえり)みるに暇(いとま)あらん
夜帰喘明月 夜に帰って 明月に喘(あえ)ぎ
朝出穿深谷 朝に出でて 深谷(しんこく)を穿(うが)つ
力雖窮田疇 力は田疇(でんちゅう)に窮(きわま)ると雖(いえど)も
腸未飽芻菽 腸(はらわた)は未(いま)だ芻菽(すうしゅく)に飽(あ)かず
稼收風雪時 稼收(かしゅう) 風雪(ふうせつ)の時
又向寒坡牧 又た寒坡(かんぱ)に向(おい)て牧(ぼく)せらる
⊂訳⊃
首の皮が擦り切れても 農耕をやめず
痩せた子牛を 顧みる暇もない
夜ふけに帰るとき 月を見上げてあえぎ
早朝に小屋を出て 深い谷間に入っていく
田圃の作業で 力は尽き果てようとしているのに
餌の秣や豆は 充分に与えられない
穫り入れが過ぎて 風雪の季節になれば
吹きさらしの丘に 放牧される
⊂ものがたり⊃ 詩題の「耕牛」(こうぎゅう)は耕す牛。農耕用の牛を描いて農民の辛苦を歌う社会詩です。農耕の牛は唐鋤や荷車の引き綱を首にかけるので、首の皮が擦り切れています。はじめの二句は、首の皮が擦り切れるほどに働かされて、子牛に心をくばる余裕もありません。
中四句はその労働のさまを詳しく述べ、早朝から夜更けまで働かされて餌も充分にあたえられません。結びの二句ではさらに追い打ちをかけ、収穫のあとの冬には「寒坡」(寒い吹きさらしの丘)に放牧され、休むときもないと詠います。