北宋22ー柳永
望海潮 望海潮 (下片十一句)
重湖疊巘清嘉 重湖(ちょうこ)疊巘(じょうけん) 清嘉(せいか)なり
有三秋桂子 三秋(さんしゅう)の桂子(けいし)
十里荷花 十里の荷花(かか)有り
羌管弄晴 羌管(きょうかん) 晴れを弄(もてあそ)び
菱歌泛夜 菱歌(りょうか) 夜に泛(うか)び
嬉嬉釣叟蓮娃 嬉嬉(きき)たる釣叟(ちょうそう) 蓮娃(れんあ)あり
千騎擁高牙 千騎(せんき) 高牙(こうが)を擁し
乗酔聴簫鼓 酔(え)いに乗じて簫鼓(しょうこ)を聴き
吟賞煙霞 煙霞(えんか)を吟賞(ぎんしょう)す
異日図将好景 異日(いじつ) 好景(こうけい)を図将(えが)き
帰去鳳池誇 鳳池(ほうち)に帰り去(ゆ)きて誇るならん
⊂訳⊃
連なる湖 幾重にも重なる山 清く麗しく
秋には木犀の実がみのり
夏には十里もつづく蓮の花
晴れた空に 羌笛の音はながれ
夜の水面に 菱摘みの歌がただよう
嬉しげにに釣る翁 蓮の実を摘む娘たち
千騎の行列 旗をかかげて着任され
酔い心地できく笛太鼓
靄や霞を吟じて楽しみなさる
杭州のよい景色を絵に描かせ
いつか朝廷で 自慢なさることでしょう
⊂ものがたり⊃ 下片では、はじめ六句で西湖に焦点をあてます。築堤で区切られた西湖、まわりに連なる山々を「清嘉」と褒め、秋の「桂子」(木犀の実)、岸辺につづく「荷花」(蓮の花)を示します。ついで湖で遊ぶ人、働く人の姿を描きます。「羌管」(胡族の笛)は妓楼から流れてくる笛の音でしょう。
つづく五句は宴会の主催者知州事を寿ぐもので、「千騎 高牙を擁し」は知州事が着任したときの行列です。そして今日の宴会のように「酔いに乗じて簫鼓を聴き 煙霞を吟賞す」るというのです。結びの二句は出世して都にもどる日を詠います。杭州の素晴らしい景色を絵に描かせ、「鳳池」(朝廷)に持ち帰って自慢なさるでしょうと祝って、詞を閉じます。
柳永は知州事の祝宴に招待されるほどの身分ではありませんでしたが、詞の流行作家として招かれ、酒席に興をそえたものと思われます。
望海潮 望海潮 (下片十一句)
重湖疊巘清嘉 重湖(ちょうこ)疊巘(じょうけん) 清嘉(せいか)なり
有三秋桂子 三秋(さんしゅう)の桂子(けいし)
十里荷花 十里の荷花(かか)有り
羌管弄晴 羌管(きょうかん) 晴れを弄(もてあそ)び
菱歌泛夜 菱歌(りょうか) 夜に泛(うか)び
嬉嬉釣叟蓮娃 嬉嬉(きき)たる釣叟(ちょうそう) 蓮娃(れんあ)あり
千騎擁高牙 千騎(せんき) 高牙(こうが)を擁し
乗酔聴簫鼓 酔(え)いに乗じて簫鼓(しょうこ)を聴き
吟賞煙霞 煙霞(えんか)を吟賞(ぎんしょう)す
異日図将好景 異日(いじつ) 好景(こうけい)を図将(えが)き
帰去鳳池誇 鳳池(ほうち)に帰り去(ゆ)きて誇るならん
⊂訳⊃
連なる湖 幾重にも重なる山 清く麗しく
秋には木犀の実がみのり
夏には十里もつづく蓮の花
晴れた空に 羌笛の音はながれ
夜の水面に 菱摘みの歌がただよう
嬉しげにに釣る翁 蓮の実を摘む娘たち
千騎の行列 旗をかかげて着任され
酔い心地できく笛太鼓
靄や霞を吟じて楽しみなさる
杭州のよい景色を絵に描かせ
いつか朝廷で 自慢なさることでしょう
⊂ものがたり⊃ 下片では、はじめ六句で西湖に焦点をあてます。築堤で区切られた西湖、まわりに連なる山々を「清嘉」と褒め、秋の「桂子」(木犀の実)、岸辺につづく「荷花」(蓮の花)を示します。ついで湖で遊ぶ人、働く人の姿を描きます。「羌管」(胡族の笛)は妓楼から流れてくる笛の音でしょう。
つづく五句は宴会の主催者知州事を寿ぐもので、「千騎 高牙を擁し」は知州事が着任したときの行列です。そして今日の宴会のように「酔いに乗じて簫鼓を聴き 煙霞を吟賞す」るというのです。結びの二句は出世して都にもどる日を詠います。杭州の素晴らしい景色を絵に描かせ、「鳳池」(朝廷)に持ち帰って自慢なさるでしょうと祝って、詞を閉じます。
柳永は知州事の祝宴に招待されるほどの身分ではありませんでしたが、詞の流行作家として招かれ、酒席に興をそえたものと思われます。