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ティェンタオの自由訳漢詩 2195

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 北宋20ー柳永
    雨林鈴               雨林鈴        (下片八句)

  多情自古傷離別    多情(たじょう)   古(いにしえ)より離別(りべつ)を傷(いた)む
  更那堪冷落清秋節  更に那(なん)ぞ堪えん  冷落(れいらく)たる清秋(せいしゅう)の節(せつ)なるに
  今宵酒醒何処     今宵(こんしょう)  酒(さけ)醒(さ)むるは何(いず)れの処ぞ
  楊柳岸暁風残月    楊柳(ようりゅう)の岸  暁風(ぎょうふう)  残月(ざんげつ)
  此去経年        此(これ)より去りて   年(とし)を経(ふ)れば
  応是良辰好景虚設  応(まさ)に是(こ)れ    良辰(りょうしん)好景(こうけい)も空しく設(もう)くべし
  便縦有千種風情    便(すなわ)ち縦(たと)い  千種(せんしゅ)の風情(ふじょう)有りとも
  更与何人説      更(さら)に何人(なんびと)と説(かた)らんや

  ⊂訳⊃
          古来感性豊かな者は  別れに胸を痛めてきた
          まして今は  寂しい秋の季節  どうして堪えることができよう
          今宵酒が醒めるのは  どんなところか
          楊柳の岸辺  夜明けの風  沈みゆく月
          時は流れて  歳月が過ぎれば
          よい季節   よい眺めも  虚しいものになるだろう
          無数の風情が   わたしの前に現れようと
          いったいそれを  誰と語り合えばいいのか


 ⊂ものがたり⊃ 下片の前段四句は、重ねて離別の感懐を詠いあげるもので、「多情」は感情が豊かで感じやすい人の意味です。感性豊かな者は昔から別れに心を痛めてきたが、「冷落」(もの寂しい)の秋の別れには堪えがたいものがあると嘆きます。
 ついで、今夜、酒も醒めて着くところはどんなところだろうかと自問し、「楊柳の岸 暁風 残月」と三つの景をぽんぽんと打ち出します。この一句は柳永畢生の名句と称されており、鮮明なイメージ語を投げだして感情を盛りあげる柳永独特の手法です。
 つづく四句はまとめの感懐です。時は流れ、いろいろな「良辰好景」(よい季節よい眺め)に出会っても、それは虚しいものに過ぎないといい、なぜならそのことを語り合う君がいないからだと結びます。この結びは親友との別れに用いる場合が多いので、別れの相手が妓女でなくても通用する仕組みになっています。観客を意識した表現であると見ることができるでしょう。


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