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ティェンタオの自由訳漢詩 2189

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 北宋14ー林逋
   山園小梅二首 其一     山園の小梅 二首  其の一

  衆芳揺落独暄妍   衆芳(しゅうほう)  揺落(ようらく)して独り暄妍(けんけん)
  占尽風情向小園   風情(ふぜい)を占め尽して小園(しょうえん)に向かう
  疎影横斜水清浅   疎影(そえい)   横斜(おうしゃ)  水(みず)清浅(せいせん)
  暗香浮動月黄昏   暗香(あんこう)  浮動(ふどう)   月(つき)黄昏(こうこん)
  霜禽欲下先偸眼   霜禽(そうきん)  下らんと欲して 先(ま)ず眼(まなこ)を偸(ぬす)み
  粉蝶如知合断魂   粉蝶(ふんちょう)  如(も)し知らば  合(まさ)に魂(こん)を断つべし
  幸有微吟可相狎   幸いに微吟(びぎん)の  相狎(あいな)る可(べ)き有り
  不須檀板与金尊   須(もち)いず  檀板(たんぱん)と金尊(きんそん)とを

  ⊂訳⊃
          花が散っても  梅だけは咲きほこり
          風雅な装いで  わが家の庭に立っている
          浅いが清らかな池の面に  まばらな影が斜めに映り
          仄かに花のかおりが漂い  月はおぼろに照っている
          冬の小鳥は  地上に降りようとしてはっと目をとめ
          蝶が知れば  胸がつぶれるほどに悲しむであろう
          幸いにもここには  梅にふさわしい私の詩がある
          だから豪華な酒宴など  必要としないのだ


 ⊂ものがたり⊃ 詩題の「山園」(さんえん)は西湖の畔、孤山の麓にあった廬の庭で、そこに咲いている梅を詠っています。梅を詠った詩のなかでは千古の絶唱と称されています。はじめの二句は導入部で、梅が他を圧して咲きほこるさまを紹介します。
 中四句、はじめの対句は梅の描写で、「疎影」は梅の枝の影。それが浅いが清らかな池の水に斜めに映っています。「暗香」は仄かな香り。梅の花の香りがただよい、月が朧に照っています。「黄昏」とあり、たそがれどきでしょう。
 つぎの対句は梅に対する周囲の反応で、小鳥と蝶が擬人化して詠われます。「霜禽」は霜のおりる季節の鳥、冬鳥でしょう。鳥は地上に降りようとして「先ず眼を偸み」、気おくれした視線でおずおずと偸みみるのです。「粉蝶」は二文字で造語する名詞で蝶のこと。蝶はまだ現れていませんので、蝶が梅の花のすばらしさを知ったら「魂を断つべし」、胸が潰れるほど悲しむであろうと想像します。
 この二句は比喩を含むと考えてよく、梅があまりにも気高いので鳥は遠慮して近づかないし、花を愛する蝶は時を同じくすることができないのを悲しむと、ひとり隠棲して孤高を持している自分を暗にいうのでしょう。
 結びの二句は、幸いにも梅のためには私がいると梅への共感を詠います。「微吟」は小声で詩歌を吟詠すること。自分の詩を謙遜しながらも、ここには梅にふさわしい私の詩があるといいます。だから「檀板と金尊」、騒がしい音楽や豪華な酒樽など大宴会はいらないと結ぶのです。 

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