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ティェンタオの自由訳漢詩 2188

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 北宋13ー林逋
    秋江写望            秋江 望を写す

  蒼茫沙觜鷺鶿眠   蒼茫(そうぼう)たる沙觜(さし)   鷺鶿(ろじ)眠る
  片水無痕浸碧天   片水(へんすい)  痕(あと)無く  碧天(へきてん)を浸(ひた)す
  最愛蘆花経雨後   最(もっと)も愛す  蘆花(ろか)  雨を経(へ)たる後(のち)
  一蓬煙火飯漁船   一蓬(いっぽう)の煙火(えんか)  漁船の飯(はん)するを

  ⊂訳⊃
          広々とした砂洲の端  白鷺が立っている

          水たまりに波はなく  空の碧さをうつす

          好ましいのは葦の花  雨あがりに炊煙が

          舟の苫やの辺りから  ひとすじ淡く昇るさま


 ⊂ものがたり⊃ 林逋(りんぽ:967ー1028)は銭塘(浙江省杭州市)の人。生まれたのは宋建国の七年後で、十三歳のときに宋の天下統一に遭遇します。銭塘は呉越国の都でしたので、幼くして父を亡くし苦学したのは亡国の臣下の家であったからでしょうか。成人すると江淮の地を遊歴し、一生仕官せず妻帯もしませんでした。
 やがて杭州にもどり、西湖のほとり、孤山に廬を結び隠棲しました。二十年間、杭州の街に足を踏み入れなかったといいます。隠者として有名になり、「梅妻鶴子」(梅を妻とし鶴を子とする)と称されました。詩名は真宗、仁宗に聞こえ、仁宗の天聖六年(1028)に亡くなったとき和靖先生の名を贈られました。享年六十二歳です。
 詩題の「望を写す」は眺めたものを描いたという意味で、雨あがりの「秋江」(しゅうこう:秋の川)を詠います。「蒼茫」は青々として広いこと、「沙觜」は砂洲の突き出た角。そこに「鷺鶿」(白鷺)が眠っているように動かずに立っています。
 「片水」の片には小さな、孤独なという意味があり、「痕無く」は風の吹いた痕、つまり波がないという意味でしょう。転句で雨後であることが示され、岸辺の蘆花と「漁船」(釣り舟)の苫やから立ち昇る炊煙を「最も愛す」と詠って閑雅の風流を示します。       

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