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ティェンタオの自由訳漢詩 2185

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 北宋10ー寇準
     江南春              江南の春

  杳杳煙波隔千里   杳杳(ようよう)たる煙波(えんぱ)  千里を隔て
  白蘋香散東風起   白蘋(はくひん)  香(こう)散じて東風(とうふう)起こる
  日落汀洲一望時   日は落つ  汀洲(ていしゅう)  一望の時
  愁情不断如春水   愁情(しゅうじょう)断たれず   春水(しゅんすい)の如し

  ⊂訳⊃
          靄のような波が立ち込め  遥かに千里を隔てる

          水草の花の香りが広がり  春風が吹きはじめる

          夕暮れに  川の中洲で一望すれば

          悲しみは絶えることなく   春川の流れのように満ちている


 ⊂ものがたり⊃ 詩題「江南の春」も唐代になじみのテーマです。この詩も女性が主人公の閨怨詩と解されますが、起句が「杳杳たる煙波 千里を隔て」とあることによって、晩年に左遷されたときの作とする考えもなりたちます。その場合は閨怨詩のスタイルに自分の悲しみを込めたと考えられます。
 「白蘋」は江南の水草、「東風」は春の到来を告げる風で、春風が吹いて水草の香りがひろがるのです。「春水」は雪解けによって水かさの増した春の川。全体として唐代のモチーフにたよっていますが、硬派の政治家の作としてみると、繊細な感性がうかがえます。

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