北宋8ー王禹偁
日長簡仲咸 日 長し 仲咸に簡す
日長何計到黄昏 日 長ければ 何の計ありてか黄昏(こうこん)に到らん
郡僻官閑昼掩門 郡 僻(かたよ)れば 官 閑(かん)にして 昼 門を掩(おお)う
子美集開詩世界 子美(しび)の集は開く 詩の世界
伯陽書見道根源 伯陽(はくよう)の書は見る 道の根源
風騒北院花千片 風 北院(ほくいん)に騒げば 花 千片(せんぺん)
月上東楼酒一樽 月 東楼(とうろう)に上れば 酒 一樽(いっそん)
不是同年来主郡 是(こ)れ同年(どうねん)の来たりて郡に主(しゅ)たるならざれば
此心牢落共誰論 此の心 牢落(ろうらく) 誰(たれ)と共にか論ぜん
⊂訳⊃
春の日は長くて 日暮れまで過ごすのがむずかしい
商州は辺鄙な所 仕事は暇で昼から門を閉じている
杜甫の詩集は 素晴らしい詩の世界を開いてくれ
老子の書物は 天地万物の本質をみせてくれる
北の庭で風が吹けば 無数の花びらが散り
東の高楼に月が昇れば 一樽の酒の出番だ
同期の君が 州知事としてここにいなければ
きっと侘びしいことだろう 語り合う友がいないのだから
⊂ものがたり⊃ 詩題の「日 長し」は詩の冒頭の二語を取って題とするもので、無題と同じです。「仲咸(ちゅうかん)に簡(かん)す」は添え書きで、進士同期の馮伉(ふうこう:字は仲咸)に書簡を送ったときにつけた詩という意味です。馮伉は王禹偁が商州に左遷されたとき商州の知州事でした。
詩は中四句二組の対句を前後の二句で囲む七言律詩で、はじめの二句は最近の生活をおおまかに述べて序とします。「郡」は州の古い言い方で商州のことです。中四句のはじめの対句は読書。「子美」は杜甫、「伯陽」は老子のことです。つぎの対句は風流の世界で、落花を眺め月が昇れば酒を楽しみます。
最後の二句は馮伉への誘いの言葉です。同期の君がいなかったら語り合う友もなく、心は「牢落」(寂しいさま)したままであろうと、来訪を誘うのです。杜甫の詩はまだ一般に評価されていなかった時期ですから、王禹偁が杜甫の詩集を愛読していたのは注目されます。
日長簡仲咸 日 長し 仲咸に簡す
日長何計到黄昏 日 長ければ 何の計ありてか黄昏(こうこん)に到らん
郡僻官閑昼掩門 郡 僻(かたよ)れば 官 閑(かん)にして 昼 門を掩(おお)う
子美集開詩世界 子美(しび)の集は開く 詩の世界
伯陽書見道根源 伯陽(はくよう)の書は見る 道の根源
風騒北院花千片 風 北院(ほくいん)に騒げば 花 千片(せんぺん)
月上東楼酒一樽 月 東楼(とうろう)に上れば 酒 一樽(いっそん)
不是同年来主郡 是(こ)れ同年(どうねん)の来たりて郡に主(しゅ)たるならざれば
此心牢落共誰論 此の心 牢落(ろうらく) 誰(たれ)と共にか論ぜん
⊂訳⊃
春の日は長くて 日暮れまで過ごすのがむずかしい
商州は辺鄙な所 仕事は暇で昼から門を閉じている
杜甫の詩集は 素晴らしい詩の世界を開いてくれ
老子の書物は 天地万物の本質をみせてくれる
北の庭で風が吹けば 無数の花びらが散り
東の高楼に月が昇れば 一樽の酒の出番だ
同期の君が 州知事としてここにいなければ
きっと侘びしいことだろう 語り合う友がいないのだから
⊂ものがたり⊃ 詩題の「日 長し」は詩の冒頭の二語を取って題とするもので、無題と同じです。「仲咸(ちゅうかん)に簡(かん)す」は添え書きで、進士同期の馮伉(ふうこう:字は仲咸)に書簡を送ったときにつけた詩という意味です。馮伉は王禹偁が商州に左遷されたとき商州の知州事でした。
詩は中四句二組の対句を前後の二句で囲む七言律詩で、はじめの二句は最近の生活をおおまかに述べて序とします。「郡」は州の古い言い方で商州のことです。中四句のはじめの対句は読書。「子美」は杜甫、「伯陽」は老子のことです。つぎの対句は風流の世界で、落花を眺め月が昇れば酒を楽しみます。
最後の二句は馮伉への誘いの言葉です。同期の君がいなかったら語り合う友もなく、心は「牢落」(寂しいさま)したままであろうと、来訪を誘うのです。杜甫の詩はまだ一般に評価されていなかった時期ですから、王禹偁が杜甫の詩集を愛読していたのは注目されます。