Quantcast
Channel: 漢詩を楽しもう
Viewing all articles
Browse latest Browse all 554

ティェンタオの自由訳漢詩 2183

$
0
0
 北宋8ー王禹偁
    日長簡仲咸           日 長し 仲咸に簡す

  日長何計到黄昏   日  長ければ  何の計ありてか黄昏(こうこん)に到らん
  郡僻官閑昼掩門   郡  僻(かたよ)れば  官  閑(かん)にして  昼  門を掩(おお)う
  子美集開詩世界   子美(しび)の集は開く    詩の世界
  伯陽書見道根源   伯陽(はくよう)の書は見る  道の根源
  風騒北院花千片   風  北院(ほくいん)に騒げば  花  千片(せんぺん)
  月上東楼酒一樽   月  東楼(とうろう)に上れば  酒  一樽(いっそん)
  不是同年来主郡   是(こ)れ同年(どうねん)の来たりて郡に主(しゅ)たるならざれば
  此心牢落共誰論   此の心  牢落(ろうらく)  誰(たれ)と共にか論ぜん

  ⊂訳⊃
          春の日は長くて  日暮れまで過ごすのがむずかしい
          商州は辺鄙な所  仕事は暇で昼から門を閉じている
          杜甫の詩集は   素晴らしい詩の世界を開いてくれ
          老子の書物は   天地万物の本質をみせてくれる
          北の庭で風が吹けば   無数の花びらが散り
          東の高楼に月が昇れば  一樽の酒の出番だ
          同期の君が  州知事としてここにいなければ
          きっと侘びしいことだろう  語り合う友がいないのだから


 ⊂ものがたり⊃ 詩題の「日 長し」は詩の冒頭の二語を取って題とするもので、無題と同じです。「仲咸(ちゅうかん)に簡(かん)す」は添え書きで、進士同期の馮伉(ふうこう:字は仲咸)に書簡を送ったときにつけた詩という意味です。馮伉は王禹偁が商州に左遷されたとき商州の知州事でした。
 詩は中四句二組の対句を前後の二句で囲む七言律詩で、はじめの二句は最近の生活をおおまかに述べて序とします。「郡」は州の古い言い方で商州のことです。中四句のはじめの対句は読書。「子美」は杜甫、「伯陽」は老子のことです。つぎの対句は風流の世界で、落花を眺め月が昇れば酒を楽しみます。
 最後の二句は馮伉への誘いの言葉です。同期の君がいなかったら語り合う友もなく、心は「牢落」(寂しいさま)したままであろうと、来訪を誘うのです。杜甫の詩はまだ一般に評価されていなかった時期ですから、王禹偁が杜甫の詩集を愛読していたのは注目されます。 

Viewing all articles
Browse latest Browse all 554

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>