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ティェンタオの自由訳漢詩 2179

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 北宋4ー李
    浪淘沙令             浪淘沙令

  簾外雨潺潺      簾外(れんがい)  雨  潺潺(せんせん)
  春意闌珊        春意(しゅんい)  闌珊(らんさん)たり
  羅衾不耐五更寒   羅衾(らきん)は耐えず 五更(ごこう)の寒きに
  夢裡不知身是客   夢裡(むり)に    身は是(こ)れ客(かく)なるを知らずして
  一晌食歓        一晌(いっしょう)  歓(かん)を食(むさぼ)る

  独自莫凭闌      独り自(みずか)ら闌(おばしま)に凭(よ)る莫(なか)れ
  無限江山        限り無き江山(こうざん)
  別時容易見時難   別るる時は容易にして見(まみ)ゆる時は難(かた)し
  流水落花帰去也   流水(りゅうすい)  落花(らっか)  帰り去(ゆ)くなり
  天上人間        天上(てんじょう)  人間(じんかん)

  ⊂訳⊃
          簾の外で  雨はしとしとと降りつづけ
          春の趣は  やがて尽き果て消えていく
          薄絹の布団は  明け方の寒さに耐えず
          夢の中で  旅にある身を忘れ
          ひと時の  楽しい思いに耽っていた

          欄干に  ひとりで身を寄せるのはよそう
          どこまでもつづく   山と川
          人生に別れは多く  出会いのときは少ない
          流れる水よ  散る花びらよ  どこへ行ってしまったのか
          天上界と人間界   その大きなへだたり


 ⊂ものがたり⊃ 詩題の「浪淘沙」(ろうとうさ)は川の波が砂を選り分けるという意味の民謡で、中唐のころから好まれている曲(令)です。その曲を用いて幽閉生活の嘆きを詠います。
 上片は雨の降る晩春の夜、「五更」(午前四時ごろ)の寒さにめざめ、夢のなかでかつての楽しかったころを思い出したのですが、それも「一晌」(短い時間)のことであったと嘆きます。下片は自分自身へ言い聞かせているもので、人生への諦め、救いのない無常感が詠われます。結びの「天上 人間」は天上界と人間界のへだたりの大きさをさしており、もうすべては終わりだと諦めるのです。
 この詞は李が宋都汴京に抑留されていたときの最後の作品とされ、宋代はじめにつくられました。しかし、李は五代十国末、後唐の皇帝であり、厳密には宋の詩人とは言えないでしょう。五代十国はおおむね武人の支配する国であり、詩文は衰退していました。そのなかで、後唐の三代目皇帝李だけが後世に認められる詞を残しました。

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