晩唐41ー韋荘
菩薩蛮 菩薩蛮
洛陽城裏春光好 洛陽城裏(らくようじょうり) 春光(しゅんこう)好(よ)し
洛陽才子他郷老 洛陽の才子 他郷(たきょう)に老(お)ゆ
柳暗魏王堤 柳は暗し 魏王(ぎおう)の堤
此時心転迷 此の時 心 転(うた)た迷う
桃花春水深 桃花(とうか) 春水(しゅんすい)深く
水上鴛鴦浴 水上(すいじょう) 鴛鴦(えんおう)浴す
凝恨対残暉 恨みを凝(こ)らして残暉(ざんき)に対し
憶君君不知 君を憶(おも)えども 君知らず
⊂訳⊃
洛陽城内に 春はうららか
洛陽の才子は 他郷で老いている
魏王の堤に ほの暗く柳は茂り
このとき心は しきりに迷うのだ
桃の花咲き 春水の流れは深く
水のおもてを 鴛鴦が泳いでいる
恨みをこめて 夕焼けの光にむかい
君を想うが 思いの届くことはない
⊂ものがたり⊃ 詩題の「菩薩蛮」(ぼさつばん)は曲名で、温庭筠(おんていいん)も同題の詞を書いています。当時、流行の曲でした。はじめ二句の「洛陽の才子」は自分のことで、「他郷に老ゆ」とありますので、洛陽にいたころの「君」(恋人)を思って蜀でつくった作品でしょう。
中四句は慕う気持ちを比喩的に描くもので、柳、桃花、春水、鴛鴦が配されています。鴛鴦はつがいで泳ぐ水鳥で、夫婦や恋人の仲が良いことの喩えとして用いられます。結びは君を二つ重ねて「君を憶えども 君知らず」と嘆きます。蜀に老いて、洛陽時代を懐かしむのでしょう。
菩薩蛮 菩薩蛮
洛陽城裏春光好 洛陽城裏(らくようじょうり) 春光(しゅんこう)好(よ)し
洛陽才子他郷老 洛陽の才子 他郷(たきょう)に老(お)ゆ
柳暗魏王堤 柳は暗し 魏王(ぎおう)の堤
此時心転迷 此の時 心 転(うた)た迷う
桃花春水深 桃花(とうか) 春水(しゅんすい)深く
水上鴛鴦浴 水上(すいじょう) 鴛鴦(えんおう)浴す
凝恨対残暉 恨みを凝(こ)らして残暉(ざんき)に対し
憶君君不知 君を憶(おも)えども 君知らず
⊂訳⊃
洛陽城内に 春はうららか
洛陽の才子は 他郷で老いている
魏王の堤に ほの暗く柳は茂り
このとき心は しきりに迷うのだ
桃の花咲き 春水の流れは深く
水のおもてを 鴛鴦が泳いでいる
恨みをこめて 夕焼けの光にむかい
君を想うが 思いの届くことはない
⊂ものがたり⊃ 詩題の「菩薩蛮」(ぼさつばん)は曲名で、温庭筠(おんていいん)も同題の詞を書いています。当時、流行の曲でした。はじめ二句の「洛陽の才子」は自分のことで、「他郷に老ゆ」とありますので、洛陽にいたころの「君」(恋人)を思って蜀でつくった作品でしょう。
中四句は慕う気持ちを比喩的に描くもので、柳、桃花、春水、鴛鴦が配されています。鴛鴦はつがいで泳ぐ水鳥で、夫婦や恋人の仲が良いことの喩えとして用いられます。結びは君を二つ重ねて「君を憶えども 君知らず」と嘆きます。蜀に老いて、洛陽時代を懐かしむのでしょう。