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ティェンタオの自由訳漢詩 2170

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 晩唐41ー韋荘
    菩薩蛮              菩薩蛮

  洛陽城裏春光好   洛陽城裏(らくようじょうり)  春光(しゅんこう)好(よ)し
  洛陽才子他郷老   洛陽の才子  他郷(たきょう)に老(お)ゆ
  柳暗魏王堤      柳は暗し   魏王(ぎおう)の堤
  此時心転迷      此の時  心  転(うた)た迷う
  桃花春水深      桃花(とうか)  春水(しゅんすい)深く
  水上鴛鴦浴      水上(すいじょう)  鴛鴦(えんおう)浴す
  凝恨対残暉      恨みを凝(こ)らして残暉(ざんき)に対し
  憶君君不知      君を憶(おも)えども  君知らず

  ⊂訳⊃
          洛陽城内に   春はうららか
          洛陽の才子は  他郷で老いている
          魏王の堤に   ほの暗く柳は茂り
          このとき心は   しきりに迷うのだ
          桃の花咲き   春水の流れは深く
          水のおもてを  鴛鴦が泳いでいる
          恨みをこめて  夕焼けの光にむかい
          君を想うが    思いの届くことはない


 ⊂ものがたり⊃ 詩題の「菩薩蛮」(ぼさつばん)は曲名で、温庭筠(おんていいん)も同題の詞を書いています。当時、流行の曲でした。はじめ二句の「洛陽の才子」は自分のことで、「他郷に老ゆ」とありますので、洛陽にいたころの「君」(恋人)を思って蜀でつくった作品でしょう。
 中四句は慕う気持ちを比喩的に描くもので、柳、桃花、春水、鴛鴦が配されています。鴛鴦はつがいで泳ぐ水鳥で、夫婦や恋人の仲が良いことの喩えとして用いられます。結びは君を二つ重ねて「君を憶えども 君知らず」と嘆きます。蜀に老いて、洛陽時代を懐かしむのでしょう。             

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