晩唐40ー韋荘
空相思 空しく相思う
無計得伝消息 計(けい)の消息(しょうそく)を伝うるを得(う)る無く
天上姮娥人不識 天上の姮娥(こうが) 人(ひと)識らず
寄書何処覓 書を寄するも何処(いずく)にか覓(もと)めん
新睡覚来無力 新睡(しんすい) 覚(さ)め来たりて力無し
不忍把伊書跡 伊(かれ)の書跡(しょせき)を把(と)るに忍びず
満院落花寂寂 満院(まんいん)の落花 寂寂(せきせき)たり
断腸芳草碧 断腸(だんちょう)す 芳草(ほうそう)の碧(みどり)なるに
⊂訳⊃
消息を伝えるすべもなく
天上の姮娥のことを 知る人はいない
便りを出そうと思うが どこに出せばいいのか
眠りから覚めても 元気がでない
かつての手紙を 読み返すこともできず
花は寂しく 庭一面に散り
若草の緑に 腸も千切れるほどだ
⊂ものがたり⊃ 韋荘は晩唐の詩風を集約するような多才の詩人で、多くの詞も残しています。伝えによれば、韋荘は蜀に行ってから文筆にひいでたひとりの美女を手に入れ、心の慰めとしていました。ところが王建(おうけん)がこれを聞いて女を奪ったので、一首の詞をつくったといいます。
詩題の「相思う」は互に思うのではなく、相手を思う意味です。女は「天上の姮娥」のように宮殿の奥深く連れ去られたので、様子を知ることができず、便りを出すこともできません。悶々として庭を眺めると、「満院の落花 寂寂たり」です。
ここは詞としては、悲しげに歌うところでしょう。「芳草の碧」といえば、春情、恋心を意味することは当時の常識でした。伝説によると、この詞を伝え聞いた女性は食を断って死んだといいます。
空相思 空しく相思う
無計得伝消息 計(けい)の消息(しょうそく)を伝うるを得(う)る無く
天上姮娥人不識 天上の姮娥(こうが) 人(ひと)識らず
寄書何処覓 書を寄するも何処(いずく)にか覓(もと)めん
新睡覚来無力 新睡(しんすい) 覚(さ)め来たりて力無し
不忍把伊書跡 伊(かれ)の書跡(しょせき)を把(と)るに忍びず
満院落花寂寂 満院(まんいん)の落花 寂寂(せきせき)たり
断腸芳草碧 断腸(だんちょう)す 芳草(ほうそう)の碧(みどり)なるに
⊂訳⊃
消息を伝えるすべもなく
天上の姮娥のことを 知る人はいない
便りを出そうと思うが どこに出せばいいのか
眠りから覚めても 元気がでない
かつての手紙を 読み返すこともできず
花は寂しく 庭一面に散り
若草の緑に 腸も千切れるほどだ
⊂ものがたり⊃ 韋荘は晩唐の詩風を集約するような多才の詩人で、多くの詞も残しています。伝えによれば、韋荘は蜀に行ってから文筆にひいでたひとりの美女を手に入れ、心の慰めとしていました。ところが王建(おうけん)がこれを聞いて女を奪ったので、一首の詞をつくったといいます。
詩題の「相思う」は互に思うのではなく、相手を思う意味です。女は「天上の姮娥」のように宮殿の奥深く連れ去られたので、様子を知ることができず、便りを出すこともできません。悶々として庭を眺めると、「満院の落花 寂寂たり」です。
ここは詞としては、悲しげに歌うところでしょう。「芳草の碧」といえば、春情、恋心を意味することは当時の常識でした。伝説によると、この詞を伝え聞いた女性は食を断って死んだといいます。