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ティェンタオの自由訳漢詩 2169

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 晩唐40ー韋荘
    空相思              空しく相思う

  無計得伝消息    計(けい)の消息(しょうそく)を伝うるを得(う)る無く
  天上姮娥人不識   天上の姮娥(こうが)    人(ひと)識らず
  寄書何処覓      書を寄するも何処(いずく)にか覓(もと)めん
  新睡覚来無力    新睡(しんすい)    覚(さ)め来たりて力無し
  不忍把伊書跡    伊(かれ)の書跡(しょせき)を把(と)るに忍びず
  満院落花寂寂    満院(まんいん)の落花  寂寂(せきせき)たり
  断腸芳草碧      断腸(だんちょう)す  芳草(ほうそう)の碧(みどり)なるに

  ⊂訳⊃
          消息を伝えるすべもなく
          天上の姮娥のことを   知る人はいない
          便りを出そうと思うが  どこに出せばいいのか
          眠りから覚めても  元気がでない
          かつての手紙を   読み返すこともできず
          花は寂しく   庭一面に散り
          若草の緑に  腸も千切れるほどだ


 ⊂ものがたり⊃ 韋荘は晩唐の詩風を集約するような多才の詩人で、多くの詞も残しています。伝えによれば、韋荘は蜀に行ってから文筆にひいでたひとりの美女を手に入れ、心の慰めとしていました。ところが王建(おうけん)がこれを聞いて女を奪ったので、一首の詞をつくったといいます。
 詩題の「相思う」は互に思うのではなく、相手を思う意味です。女は「天上の姮娥」のように宮殿の奥深く連れ去られたので、様子を知ることができず、便りを出すこともできません。悶々として庭を眺めると、「満院の落花 寂寂たり」です。
 ここは詞としては、悲しげに歌うところでしょう。「芳草の碧」といえば、春情、恋心を意味することは当時の常識でした。伝説によると、この詞を伝え聞いた女性は食を断って死んだといいます。 

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