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ティェンタオの自由訳漢詩 2161

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 晩唐32ー杜荀鶴
    再経胡城県           再び胡城県を経て

  去歳曾経此県城   去歳(きょさい)  曾(かつ)て此の県城を経(へ)しとき
  県民無口不冤声   県民(けんみん)  口として冤声(えんせい)ならざるは無かりき
  今来県宰加朱紱   今(いま)来たるに  県宰(けんさい)は朱紱(しゅふつ)を加う
  便是生霊血染成   便(すなわ)ち是(こ)れ生霊(せいれい)の血  染めて成りしものぞ

  ⊂訳⊃
          去年  この街を通ったとき

          町の人々は   口を揃えて悪政を呪った

          今来てみると  町長は朱の印綬を帯びている

          これこそは   人民の生血で染めたものなのだ


 ⊂ものがたり⊃ 杜荀鶴(とじゅんかく:846ー907)は池州石埭(せきたい:安徽省青陽県の南)の人。杜牧が池州刺史のとき侍妾に孕ませ、生まれる前に地元の杜氏に入嫁させた女の子とする伝えがあります。
 黄巣の乱が勃発した乾符元年(875)に杜荀鶴は三十歳になっていましたが、まだ進士に及第していませんでした。乱後、昭宗の大順二年(891)に四十六歳で進士に及第します。天祐四年(709)四月に唐が滅亡すると、梁(後梁)に仕えて翰林学士になりますが、その年に亡くなりました。享年六十二歳です。
 詩題の「胡城県」(こけんじょう:安徽省阜陽県の西北)付近は、黄巣の乱のはじめ王仙之(おうせんし)の率いる一揆が荒れ狂った地方です。詩はそれ以前の状況を詠うものでしょう。
 「県宰」は弱小の県の県令をいいます。日本でいえば大きな町の町長程度です。「朱紱」は朱色の印綬(印の吊り紐)のことで、四、五品官の官職をしめし、県令としては身分違いの品階を得たことになります。去年この町を通ったとき、県民の怨嗟の声を聞いたが、やはり県令は苛酷な税を取り立て、その褒美に朱紱の品階を得たのであろうと苛政に賞を与える政府を批判するのです。

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