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ティェンタオの自由訳漢詩 2160

 晩唐31ー聶夷中
    傷田家              田家を傷む

  二月売新糸     二月  新糸(しんし)を売り
  五月糶新穀     五月  新穀(しんこく)を糶(ちょう)す
  医得眼前瘡     眼前(がんぜん)の瘡(そう)を医(いや)し得て
  剜卻心頭肉     心頭(しんとう)の肉を剜卻(わんきゃく)す
  我願君王心     我(わ)れ願わくは  君王(くんおう)の心
  化作光明燭     化(か)して光明の燭(しょく)と作(な)り
  不照綺羅筵     綺羅(きら)の筵(えん)を照らさず
  但照流亡屋     但(た)だ流亡(るぼう)の屋(おく)を照らさんことを

  ⊂訳⊃
          二月には  新しい絹糸を売り
          五月には  採れた穀物を売りに出す
          これでは  眼の前の傷を癒やして
          胸の肉を  けずりとるようなものだ
          どうか    君王の心が
          天下の希望の灯火となり
          豪華な宴会の席ではなく
          流亡の民の家を照らしてほしいものだ


 ⊂ものがたり⊃ 聶夷中(じょういちゅう:837ー884?)は河東(山西省永済県)の人とも河南(河南省洛陽県)の人ともいいます。貧窮の家に育ち、懿宗の咸通十二年(871)に三十五歳で進士に及第しましたが、官途には恵まれませんでした。
 衰退する時代に生きて社会派の立場をつらぬき、民衆の生活苦を取り上げました。警世の志を諷諭詩に託しますが、黄巣の乱が終わった僖宗の中和四年(884)ころ亡くなります。享年四十八歳くらいです。
 詩題の「田家」(でんか)は農家のことです。分かりやすい詩句で農家の苦労を描き、政事に直接ものを言います。「君王の心 化して光明の燭と作り」と言っていますが、そんなことは期待できないことを知っているから敢えて言うという解釈もできるでしょう。

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