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ティェンタオの自由訳漢詩 2154

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  晩唐25ー皮日休
    橡媼嘆             橡媼の嘆き          (後十句)

  狡吏不畏刑     狡吏(こうり)は刑(けい)を畏(おそ)れず
  貪官不避贓     貪官(たんかん)は贓(ぞう)を避(さ)けず
  農時作私債     農時(のうじ)   私債(しさい)を作(な)し
  農畢帰官倉     農畢(おわ)って 官倉(かんそう)に帰(き)す
  自冬及於春     冬より春に及び
  橡実誑饑腸     橡(とち)の実  饑腸(きちょう)を誑(あざむ)く
  吾聞田成子     吾(わ)れ聞く  田成子(でんせいし)は
  詐仁猶自王     仁(じん)を詐(いつわ)るも  猶(な)お自(おのず)から王たり
  吁嗟逢橡媼     吁嗟(ああ)   橡媼(しょうおう)に逢(あ)って
  不覚涙沾裳     覚(おぼ)えず 涙の裳(もすそ)を沾(うるお)すを

  ⊂訳⊃
          ずるい役人は  処罰をおそれず
          欲張り官吏は  収賄も平気だ
          耕すにはまず  役所から銭を借り
          収穫すれば   すべて官の倉庫にもどる
          冬から春にかけての空腹は
          橡の実でだますしか方法がない
          昔田成子は  仁者をよそおい
          それでも    王者になれたという
          橡の実を拾う老婆に逢って
          涙がながれ  思わず裳裾が濡れてしまった


 ⊂ものがたり⊃ 後十句のはじめ六句は稲を全部役所に納めなければならない理由です。当時の農業の実態を描くもので、農家は春、耕作を始めるにあたって、資金がないので役所から借金をします。だから収穫物は、借金の返済と税ですべて役所にもどる仕組みになっていました。空腹は橡の実で満たすほかはないと、悪政が背後にあることを指摘します。
 最後の四句は結びで、「田成子」は春秋斉の宰相田常(でんじょう)のことです。田常は姜姓呂氏の政権を奪うため、人民に米を貸すときは大きな桝を使い、回収するときは小さな桝を用いて民の歓心をあつめました。いまの世には、田常のような偽の仁政をおこなう者もいないと嘆くのです。
 

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