晩唐16ー魚玄機
秋怨 秋怨
自歎多情是足愁 自(みずか)ら歎く 多情(たじょう)は是(こ)れ足愁(そく しゅう)なるを
況当風月満庭秋 況(いわ)んや風月 満庭(まんてい)の秋に当たるをや
洞房偏与更声近 洞房(どうぼう) 偏(ひと)えに更声(こうせい)に近し
夜夜燈前欲白頭 夜夜(よよ) 燈前(とうぜん) 白頭(はくとう)ならんと欲す
⊂訳⊃
自らなげく 私の思いは愁いに満ちていると
清風と明月 庭一杯の秋になれば愁いはまさる
閨の近くで 時刻を報せる太鼓の音
灯火の前で 夜ごと老いを見詰める私です
⊂ものがたり⊃ 詩題の「秋怨」(しゅうえん)は秋の怨み。秋はものごとの衰える季節ですので、わが身の衰えを嘆きます。李億と別れたあとの心情を詠うものでしょう。「多情」は浮気っぽいという意味ではなく多感、心に思うことが多いということです。「足愁」は愁いに足る、足るは満ちることを意味します。
「風月」は清風と明月で、秋の象徴です。それが「満庭」(庭いっぱい)の秋に重なります。「洞房」は女性の寝室、「更声」は時刻を知らせる太鼓の音で、孤独な夜の象徴です。魚玄機は二十五歳で死罪になっていますので、白髪には遠いはずです。だから愁いの深さを老いに喩えて訴えるのでしょう。
秋怨 秋怨
自歎多情是足愁 自(みずか)ら歎く 多情(たじょう)は是(こ)れ足愁(そく しゅう)なるを
況当風月満庭秋 況(いわ)んや風月 満庭(まんてい)の秋に当たるをや
洞房偏与更声近 洞房(どうぼう) 偏(ひと)えに更声(こうせい)に近し
夜夜燈前欲白頭 夜夜(よよ) 燈前(とうぜん) 白頭(はくとう)ならんと欲す
⊂訳⊃
自らなげく 私の思いは愁いに満ちていると
清風と明月 庭一杯の秋になれば愁いはまさる
閨の近くで 時刻を報せる太鼓の音
灯火の前で 夜ごと老いを見詰める私です
⊂ものがたり⊃ 詩題の「秋怨」(しゅうえん)は秋の怨み。秋はものごとの衰える季節ですので、わが身の衰えを嘆きます。李億と別れたあとの心情を詠うものでしょう。「多情」は浮気っぽいという意味ではなく多感、心に思うことが多いということです。「足愁」は愁いに足る、足るは満ちることを意味します。
「風月」は清風と明月で、秋の象徴です。それが「満庭」(庭いっぱい)の秋に重なります。「洞房」は女性の寝室、「更声」は時刻を知らせる太鼓の音で、孤独な夜の象徴です。魚玄機は二十五歳で死罪になっていますので、白髪には遠いはずです。だから愁いの深さを老いに喩えて訴えるのでしょう。