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ティェンタオの自由訳漢詩 2144

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 晩唐15ー魚玄機
   江陵愁望有寄         江陵の愁望 寄する有り

  楓葉千枝復万枝   楓葉(ふうよう)千枝(せんし)  復(ま)た万枝(ばんし)
  江橋掩映暮帆遅   江橋(こうきょう)に掩映(えんえい)して  暮帆(ぼはん)遅し
  憶君心似西江水   君を憶(おも)えば 心は西江(せいこう)の水に似たり
  日夜東流無歇時   日夜(にちや)    東に流れて歇(や)む時(とき)無し

  ⊂訳⊃
          楓の枝葉が  鬱蒼と伸び

          橋を覆って  船は日暮れになってももどらない

          あの方を想う心は  西江の水のようだ

          昼も夜も    東に流れてとどまることがない


 ⊂ものがたり⊃ 魚玄機(ぎょげんき:844?ー868)は長安(陝西省西安市)の人。妓楼に育って員外郎李億(りおく)の小婦(妾)になり、各地を旅します。李億と別れたあと長安の咸宜観の女道士になり、自由奔放な生き方をしました。
 そのころ緑翹(りょくぎょう)という侍婢を雇っていましたが、「名慧有色」の美少女でした。懿宗の咸通九年(868)、魚玄機は男のことで緑翹を嫉妬し、激しく笞打って死なせました。そのため殺人の罪に問われて処刑されました。享年二十五歳くらいです。
 掲げる詩には「江陵愁望寄子安」と題するテキストがあり、子安(しあん)は李億の字(あざな)です。だから、二人で旅をして江陵(湖北省江陵県)に留まったときの作と思われます。李億が何かの用件で魚玄機を江陵に残して出かけ、その帰りを待つときの詩でしょう。
 「西江」は長江と思われますので、「江橋」は江陵の渡津近くの小川に架かっていた橋でしょう。起句の「楓葉千枝 復た万枝」は江橋付近の情景であると同時に、ひとりで恋人の帰りを待つ女の胸の内を喩えるものと解されます。

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