晩唐15ー魚玄機
江陵愁望有寄 江陵の愁望 寄する有り
楓葉千枝復万枝 楓葉(ふうよう)千枝(せんし) 復(ま)た万枝(ばんし)
江橋掩映暮帆遅 江橋(こうきょう)に掩映(えんえい)して 暮帆(ぼはん)遅し
憶君心似西江水 君を憶(おも)えば 心は西江(せいこう)の水に似たり
日夜東流無歇時 日夜(にちや) 東に流れて歇(や)む時(とき)無し
⊂訳⊃
楓の枝葉が 鬱蒼と伸び
橋を覆って 船は日暮れになってももどらない
あの方を想う心は 西江の水のようだ
昼も夜も 東に流れてとどまることがない
⊂ものがたり⊃ 魚玄機(ぎょげんき:844?ー868)は長安(陝西省西安市)の人。妓楼に育って員外郎李億(りおく)の小婦(妾)になり、各地を旅します。李億と別れたあと長安の咸宜観の女道士になり、自由奔放な生き方をしました。
そのころ緑翹(りょくぎょう)という侍婢を雇っていましたが、「名慧有色」の美少女でした。懿宗の咸通九年(868)、魚玄機は男のことで緑翹を嫉妬し、激しく笞打って死なせました。そのため殺人の罪に問われて処刑されました。享年二十五歳くらいです。
掲げる詩には「江陵愁望寄子安」と題するテキストがあり、子安(しあん)は李億の字(あざな)です。だから、二人で旅をして江陵(湖北省江陵県)に留まったときの作と思われます。李億が何かの用件で魚玄機を江陵に残して出かけ、その帰りを待つときの詩でしょう。
「西江」は長江と思われますので、「江橋」は江陵の渡津近くの小川に架かっていた橋でしょう。起句の「楓葉千枝 復た万枝」は江橋付近の情景であると同時に、ひとりで恋人の帰りを待つ女の胸の内を喩えるものと解されます。
江陵愁望有寄 江陵の愁望 寄する有り
楓葉千枝復万枝 楓葉(ふうよう)千枝(せんし) 復(ま)た万枝(ばんし)
江橋掩映暮帆遅 江橋(こうきょう)に掩映(えんえい)して 暮帆(ぼはん)遅し
憶君心似西江水 君を憶(おも)えば 心は西江(せいこう)の水に似たり
日夜東流無歇時 日夜(にちや) 東に流れて歇(や)む時(とき)無し
⊂訳⊃
楓の枝葉が 鬱蒼と伸び
橋を覆って 船は日暮れになってももどらない
あの方を想う心は 西江の水のようだ
昼も夜も 東に流れてとどまることがない
⊂ものがたり⊃ 魚玄機(ぎょげんき:844?ー868)は長安(陝西省西安市)の人。妓楼に育って員外郎李億(りおく)の小婦(妾)になり、各地を旅します。李億と別れたあと長安の咸宜観の女道士になり、自由奔放な生き方をしました。
そのころ緑翹(りょくぎょう)という侍婢を雇っていましたが、「名慧有色」の美少女でした。懿宗の咸通九年(868)、魚玄機は男のことで緑翹を嫉妬し、激しく笞打って死なせました。そのため殺人の罪に問われて処刑されました。享年二十五歳くらいです。
掲げる詩には「江陵愁望寄子安」と題するテキストがあり、子安(しあん)は李億の字(あざな)です。だから、二人で旅をして江陵(湖北省江陵県)に留まったときの作と思われます。李億が何かの用件で魚玄機を江陵に残して出かけ、その帰りを待つときの詩でしょう。
「西江」は長江と思われますので、「江橋」は江陵の渡津近くの小川に架かっていた橋でしょう。起句の「楓葉千枝 復た万枝」は江橋付近の情景であると同時に、ひとりで恋人の帰りを待つ女の胸の内を喩えるものと解されます。